ヨーロッパを東西に流れる大河ドナウ川で最も美しいと言われているのがオーストリアのヴァッハウ渓谷(Wachau)。2019年7月、ウィーンから日帰りで出かけました。
☆ドナウ川下りの船からヴァッハウ渓谷を眺める
ドナウ川下りの船に乗ると、左右に連なる山並みの麓にブドウ畑が広がります。
ドナウ川を見下ろす古城、岸辺にたたずむ小さな街が次々にあらわれます。
ドナウ川はオーストリアの交通の大動脈で、観光船や貨物船と頻繁にすれ違います。
観光船の中には本格的な料理が食べられるレストランもありますが、筆者はワインとつまみだけを買って、オープンデッキからヴァッハウ渓谷の景色を楽しみました。
ヴァッハウ渓谷の一番の見どころと言えるデュルンシュタイン(Dürnstein)の街が見えてきました。
☆かわいい街、デュルンシュタイン
デュルンシュタイの象徴と言うべき鐘楼の教会がそびえます。カトリックの教会では珍しい青と白の配色は陶磁器のようです。背後から城塞が街を見下ろします。
船を降りて街へ行くのにトンネルの階段を登ります。おもしろいアクセスです。
デュルンシュタインは小さな街で、メインストリートであるハウプト通りは端から端まで5分くらいで歩けるくらいです。左右に古くからの石造りの建物をそのまま利用したカフェやお店が並びます。
街の端のクレムス門を出たところにワインショップがあり、4.5€(≒550円)で店内のワイン30種類くらいから3杯テイスティングできました。ウィーンではなくここに泊ればたくさん飲めたのにと少々後悔しました。
ワインの他にアプリコットがヴァッハウの名産品とのことで、ジャムや濃縮ジュースなどが売られていました。
教会内部は外の光が入る開放的な造りで、絢爛豪華な装飾が映えます。
城塞に登る道すがら街を振り返ると、街の建物の屋根は赤茶系が多く、緑の丘、教会の鐘楼の青と白。デュルンシュタインの街は色彩豊かです。
☆世界遺産の修道院がそびえるメルク
ドナウ川下りの出発地となるのがメルク(Melk)。世界遺産の修道院が街を見下ろす丘の上にそびえます。
駅から観光案内所がある川岸まで歩いて約5分、店などが並ぶ街の中心街ハウプト通りを抜けて、坂を登って修道院入口までさらに徒歩5分くらいです。
ハウプト通りの両側にはカフェ、レストラン、ホテル、さまざまなお店が建ち並び、修道院がその上にのしかかるように見えます。
門を入ると広大な中庭。
チケット売り場もこの一角にあります。美術品の並ぶ博物館のような広間、宮殿のような素晴らしい装飾など見どころいっぱいです。修道院内部は撮影禁止のため写真でご紹介できないのが残念です。
☆ヴァッハウ渓谷へのアクセス
オーストリアの首都ウィーンから電車でメルクまで1時間~1時間10分。途中ザンクトペルテンで1回乗り換えがあります。
ドナウ川下りの観光船はメルクからクレムスまで2社がそれぞれ1日2~3本ずつ運行しています。本数は時期と曜日によって異なり、運行期間は3月下旬から10月にかけてですが、年によって変動しますので、事前にチェックが必要です。同じ区間を走るバスもあります。
ドナウ川下りの船はデュルンシュタインなどいくつかの岸辺の街に止まります。
メルクからクレムスまで船、または、船とバスを組み合わせ、クレムスから電車でウィーンに戻るというのが一般的な日帰りコースです。クレムスからウィーンへは所要1時間~1時間20分で、直通列車もあります。
ヴァッハウ渓谷はオーストリア国内の幹線路のすぐ近くに位置しており、ウィーンとメルクやクレムスを結ぶ列車の本数は多く、朝早くから夜遅くまであります。ヴァッハウ渓谷へのアクセスは便利なので、ウィーンから出ている日帰りバスツアーを利用する価値はあまりないように思います。
☆おしまいに
ヴァッハウ渓谷の一帯は「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」の名で、ユネスコの世界遺産に登録され、ドナウ川下りは7,8月を中心に多くの観光客を集めます。
オーストリアの首都ウィーンから1時間あまりで行けますので、観光でもビジネスでもウィーンを訪れた際に、1日を割いて日帰り旅はいかがでしょうか。
デュルンシュタインに1泊すれば、観光客のいなくなった夜や早朝の静寂を楽しめ、帰りを気にすることなく地元産のおいしいワインを好きなだけ飲めます。
音楽鑑賞のためにウィーンに滞在している方にもお薦めです。朝8時までにウィーン中央駅を出発すれば、メルクの修道院を見学して、デュルンシュタインまでドナウ川下りを楽しみ、3時間くらいデュルンシュタインの街を歩いてランチして、クレムス経由で夜のオペラやコンサートの開演時間までにウィーンに戻ってこられます。