ミルフォードトラック:その魅力と歩き方

「世界で最も美しい散歩道」と言われる
ミルフォードトラック。

ニュージーランド南島の南西部、ミルフォードサウンドとテ・アナウ湖を結ぶ約53kmのトレッキングコースは感動の連続です。まず、その魅力をご紹介します。

1. 手つかずでスケールの大きな自然

自然環境保護のため、ミルフォードトラックへの入山者数は制限されており、手つかずの大自然がそのまま残っています。

氷河によって削られた深いU字谷の中を歩きます。Milford U字谷

崖を流れ落ちる滝は数知れず。Milfordサザーランドの滝

山道と並行して流れる川。
大規模な地滑りが発生したところでは、堰き止められて池になっています。Milford川

ミルフォードトラックの鳥たちは人慣れしていて、近くまで寄ってきます。Milford鳥

風に揺れる花。 Milford花

2. 上級クライマーでない、ふつうのハイカーでも歩ける

ミルフォードトラックの山道は整備されて歩きやすく、脇道に迷い込みやすいところには標識が立てられています。Milford分岐の標識

1マイルごとに、どのあたりかわかる標識は、周囲の木々に溶け込む色合いです。Milford標識

行程中のハイライトであるマッキンノン峠を越える道は緩やかなジグザグ道。600m登って900m下りますが、よじ登り感は全くありません。Milford登り道

足を踏み外したら、谷底まっさかさまの危険な場所はミルフォードトラックにはほとんどありません。峠の上のここくらい。Milford崖の上

難所には木の階段が架けられているところもあります。Milford下りの階段道

ミルフォードトラックでは安全には十分に配慮されています。

3. 悪天候でも景色を楽しめる

ミルフォードトラックのある地域は世界屈指の多雨地帯です。雨に降られる確率はかなり高いのですが、峠を除いては標高が高くないので、雨の日でも霧で周囲がまっ白になることがなく、景色を楽しめます。

霧に煙る滝も風情があります。雨で水量を増して迫力満点です。Milford雨の滝

雨が強いと道が川のようになり、膝まで水に浸かって歩くこともあります。Milford水浸しの道

4. ミルフォードトラックを歩くには

ミルフォードトラックへは個人で好きな時に訪れることはできません。以下の2つのいずれかに事前予約する必要があります。

ひとつは個人ウオーク(Independent Walk)。

3泊4日の決められた行程を個人で歩きます。食糧や装備はすべて自分で持ち歩きます。ロッジは簡素ですが、洗い場、コンロ、トイレはあります。2段ベッドにはマットレスは用意されており、寝袋を持参します。Milford個人ウオークの小屋

もうひとつはガイド付きウオーク(Guided Walk)。

1日につき50人までで、参加費は高額ですが、その値段にふさわしい、すばらしい体験ができます。2019-20シーズンは1NZ$=68円として、相部屋で約16万円、個室だとその約2割増です。

歩くのは実質3日で、山中のロッジに3泊し、4泊目はミルフォードサウンドのホテルです。

相部屋の様子です↓Milfordロッジ相部屋

歩いている時は、ガイドが先頭と最後尾について、安全には万全を期しています。ミルフォードトラックの魅力、行程中の個別の見どころなどいろいろな話を聞けます。ランチを食べるところでは、暖かい飲み物を用意してくれます。

増水した濁流を渡る時にはアシストも。Milford濁流アシスト

電話もネットもつながらない山奥ですが、ロッジの設備、食事はホテル並みです。

到着すると、入口にジュース、水、軽食、フルーツが用意されています。ロビーに入るとさらにたくさん。コーヒー、紅茶もあります。Milfordロッジ軽食

ラウンジでゆったりできます。バーもあって、有料ながら、地元のワイン、ビールも飲めます。Milfordロッジのラウンジ

ディナーは地元の食材を使ったコース料理です。メインは3種類から選べます。

前菜。Milford前菜

メイン。Milfordメイン

デザートも。Milfordデザート

さらにテーブルごとに大皿のサラダが出されます。

朝食はビュッフェ。パン、シリアル、卵、ベーコン、フルーツ、ヨーグルトが並びます。エッグベネディクトが出される日もあります。

朝食前に、テーブルに並べられた豊富な食材でランチのサンドイッチを作って持っていきます。Milfordランチ

最終日はミルフォードサウンドのクルーズ。Milfordミルフォードサウンドクルーズ

さまざまな国のトレッキング仲間と交流でき、まさに至れり尽くせりの4泊5日です。

ミルフォードトラックのガイド付きツアーの全行程詳細レポートは⇒こちらへ

5. ミルフォードトラックを歩く詳細ノウハウ

ガイド付きツアーでミルフォードトラックを歩く時のノウハウをお伝えします。

☆ツアー予約

主催者のUltimate Hikesのサイトに、出発日ごとの空き状況が表示されています。日本語対応もされています。必要情報を入力し、クレジットカードで支払いすれば予約完了です。

予約完了すると、全行程の詳細、準備、注意点が書かれた資料がメールで送られてきます。

日本の旅行会社が主催する、ツアー申込も含めたパックツアーに申し込むこともできますが、料金は割高です。

☆ツアー参加のための所要日数

4泊5日の行程ですが、ツアーの前日、出発地クイーンズタウンで行われる説明会で、ツアー全般の予定、注意点の説明があり、貸与品の受け取りもあるので、出席したほうがいいです。したがって、
休暇1日目:日本出発
休暇2日目:クイーンズタウン着、説明会
休暇3~7日目:ミルフォードトラック・ツアー
休暇8日目:早朝にクイーンズタウン発、夕方、帰国。
と、最低8日が必要です。

ツアー最終日にクイーンズタウンの空港で降ろしてもらって、そのままフライトで帰国、または、ニュージーランド国内の他の都市に移動するのは、帰りのバスが遅れるリスクを考えるとお薦めできません。

☆言葉の心配

日本人参加者が多い時は、いつもとは限りませんが、ガイドの一人が日本人になります。クイーンズタウンのUltimate Hikesでの出発前日の説明も日本語でやってもらえることがあります。

前日にもらえる行程や注意書きを書いた資料も日本語対応しています。Milfordナビゲーター

☆持ち物

ザックをしょって歩くことになりますので、なるべく軽くすることが肝要です。

出発前日の説明会で、主催者Ultimate Hikesがくれるビニールのバッグに不要なものを入れて、初日に預けると、4日目に宿泊するロッジまで運んでもらえます。ただし、容量に限りあり、スーツケースなど大きなものは入れられませんので、自分で対応しなければなりません。

出発地のクイーンズタウンで荷物預けを探すか、出発前日と最終日に同じホテルに泊まって、トレッキングに必要ない荷物を保管してもらうのがいいでしょう。

☆持ち物:衣類

各ロッジには洗濯用のシンクがあり、乾燥室は(4日目を除いて)強力で、ディナー前に洗濯して干しておけば、夜10時に電気が切れる前には乾きますので、多くの着替えを持ち運ぶ必要はありません。

歩いて汗をかき、雨に濡れる可能性が高いので、乾きやすい化学素材を選びましょう。綿素材はNGです。重ね着できる工夫も必要です。これらは一般的な登山の心得と同様ですが、天候が急変しやすいミルフォードトラックでは特に重要です。

1,2月の真夏でも、峠越えでは気温が0℃近くまで下がることがあり、台風並みの強風が吹く日もあります。

☆持ち物:ブーツとスリッパ

登山用ブーツは履きなれたもの持ってきましょう。水浸しになる可能性が高く、乾かしていると、上部が裂けることがありますので、あまり古いものはよくないでしょう。

ガイドさんによると、毎回1人はブーツが裂ける人がいて、テーピングの応急処置が必要になるそうです。

Milfordブーツ裂けた←こんなふうになる!

 

 

 

 

 

 

 

また、ブーツの底についた土はきれいに掃って持ってきましょう。ニュージーランド入国の際に税関でチェックされることがあります。

ロッジの中では登山ブーツは履けないルールになっていますので、上履きが必須です。床が濡れていることもありますので、布の薄いスリッパは不向きです。軽量かつ底が厚いものを選びましょう。

☆持ち物:雨具

ミルフォードトラックは世界屈指の多雨地帯ですので必須です。上半身に水が浸み込まないように、ザックと上半身を一体で覆える雨具がいいでしょう。

傘をさして歩けなくはありませんが、どしゃぶりになると役に立たなくなるのでお薦めできません。

ズボン、ブーツに上から雨が入らないようにする防水レッグカバーもあったほうがいいでしょう。

Ultimate Hikesで前日の説明会の時に無料で貸してもらえますが、自分に合うものを持って行ったほうがいいです。

☆持ち物:虫よけ

サンドフライという蚊のような小さな虫が、休憩時間で止まっていると、露出した肌に大量にくっついてきます。日本の蚊は振り払えば飛んでいきますが、サンドフライはくっついたまま離れようとしません。体質にもよりますが、さされるとかなりかゆい。しかも数日続くことが多い。

肌をなるべく露出させないことが肝要ですが、手などにはスプレーで手当てしておいたほうがいいでしょう。クイーンズタウンのUltimate Hikesの店でスプレーを売っていますが、自分に合ったものを持ってくるほうがいいでしょう。顔にもくっついてきますので、網のようなもので覆っている女性もいます。

☆持ち物:食べ物

山奥で売店もない、小腹がすいたらどうしよう、と考えてスナック菓子、バランス栄養食品などを持っていく必要はありません。

ロッジに到着すると軽食が用意されているので、ディナー前に空腹に悩むことはありません。夜、お腹がすきそうな人は、バナナやビスケットをキープしておけばいいでしょう。

☆持ち物:水筒

必須です。行程中、ミネラルウオーターは手に入りません。浄水器もありません。

初日はバスの中で飲む分を出発前に用意します。2日め以降は、朝、ロッジで適量を入れていきます。途中の休憩場所で、暖かい飲み物、ジュースも出してもらえますし、水の補給もできますので、たくさん入れていく必要はありません。

☆持ち物:懐中電灯

日が短くなる3~4月に参加する場合、暗くなってから歩くことに備えることを考える方もいらっしゃるでしょうが、朝早く出発する余裕のスケジュールで、アクシデントで他の参加者から遅れて一人で歩く場合でも、ガイドがフォローしてくれますから、基本的に不要でしょう。

ロッジでは22時~6時すぎまで電気がつきませんが、部屋に懐中電灯が常備されていますので不要です。スマホの電燈ソフトで十分です。

☆持ち物:トレッキングポール

Ultimate Hikesから有料(25NZ$)で借りられます。

☆持ち物:カメラ

雨に遭う可能性が高いので、カメラは防水機能があるものにしたほうがいいでしょう。メインのカメラの他に、軽めの防水カメラの2台持ちしている人もいます。

☆電話・ネットは使えない

初日にテ・アナウでランチを食べてから、5日目に同じ場所に戻るまで一切使えません。

☆保険

必ず日本出発前に入っておきましょう。

6. ミルフォードトラックへのアクセス

起点となるのが、ニュージーランド南島有数のリゾートタウン、クイーンズタウン(Queenstown)。Milford Queenstown

ガイド付きツアーの発着地です。

クイーンズタウンへは、日本からのフライトがあるオークランドから1日6~8便(夏季)のフライトがあり、所要1時間50分。クライストチャーチからは1日4~5便で、所要約1時間。オーストラリアからのフライトもあります。

空港から街の中心へは15分おきにバスが運行されており、所要30分くらいです。

クイーンズタウンのガイドは⇒こちらへ

さて、いかがでしたでしょうか。この記事が、これからミルフォードトラックを歩こうと計画されている方のお役に立てれば幸いです。