欧米の劇場のチケットを賢く買うコツ

筆者はオペラやオーケストラなどのクラシック音楽が好きで、これまで約30年間の海外旅行のほとんどで欧米の劇場を訪れました。音楽を聴くだけでなく、その国その街の個性が反映されたオペラハウスやコンサートホールを観て回るのも楽しいものです。

「チケットはどうやって買うのですか」と尋ねられることがよくあり、「劇場の窓口かインターネットですよ」と答えると、「そんなことできるんですか」と反応されることがあります。

出発前に日本の旅行会社にチケット購入を依頼して、事前に確保していかないと劇場に入れないと思い込んでいる方がいらっしゃいますが、それは残念な間違いです。

日本の旅行会社は現地の業者にチケット確保を委託するので、手数料が二重にかかってしまいます

筆者が2007年にフランスのAix-en-Provence音楽祭でベルリンフィルのオペラ(ワーグナーのワルキューレ)を観に行った時には、日本の旅行会社に依頼しましたが、券面350€(当時のレートで¥57,750)のチケットが手数料を上乗せされ¥73,840になりました。

これはなるべくなら払いたくないコストですよね。旅行業者に依頼する前に自分で買えないか考えてみたほうがいいのではないでしょうか。

☆ネットでチケットを買う

欧米のたいていの劇場のチケットはインターネットで買えます。↓これはミラノスカラ座の例。ScalaTicket1

座席表に空いている席と値段が表示され、選ぶことができます。ScalaTicket2

クレジットカードで決済し、公演前に劇場にあるボックスオフィス(チケット売り場)でクレジットカードを提示して、その場でチケットを渡してくれます。

最近ではネットでチケット購入した時点で、サイトからダウンロードできたり、主催者から送られてくるメールにチケットが添付されていたりして、自宅でプリントアウトしてもっていくこともできます。旅行中にネットで買ってプリンタが利用できない場合でも、ホテルのフロントにメール送付して、プリントアウトしてもらうことができます。

クレジットカード番号をネットで入力することの安全性だけが懸念されますが、その他は簡単です。

私は2014年10月、超人気の歌姫アンナ・ネトレプコが出演する、ニューヨークのメトロポリタンオペラ「マクベス」の1階最前列席を公演の10日前にネットで買い、公演2日前に現地窓口でチケットを受け取りました。券面$400に発券手数料が上乗せされ、当時のレート($1=¥108)で¥45,801でした。日本の旅行会社を通していたら、きっと¥60,000以上していたでしょう。DSC_1328

☆劇場で当日チケットを買う

ボックスオフィスはたいていの劇場では正面入口の横か脇にあるのですが、大きな劇場ではわかりにくい場所にあることがあり、探すのに難儀することがあります。入口と離れていたり、劇場とは別の建物にあることもあります。その街に着いたらすぐに観光案内所などで確認したほうがいいです。

開演前に残席がある場合は元の券面価格から値引き発売されることもあります。

2013年6月にミラノスカラ座でワーグナーの「ニーベルンクの指輪」4公演を観に行った時には、開演前1時間を切ると、券面価格より4割引きで売っていました。2013JuneTravel 038

☆こんな場合は旅行会社を使う

旅行会社にチケット手配を依頼したくなる場合にはこんなのがあるでしょう。
① 現地の言葉も英語も全くできない
② チケット完売で、キャンセルが出る見込みがない
③ 目的の演目のチケットは入手可能でも、公演後に泊れる近くのホテルが旅行業者にすべておさえられて、ホテル予約と劇場チケットが抱き合わせ販売になっている

①は誤解です。劇場窓口係員はたいてい英語ができます。外国人客も来訪することを想定して、英語のできる担当者を配しています。そこでのチケット購入に必要な英語力は中学2年程度。必要な単語は限られていますので、文にして言わなくても、単語を羅列すればよいのです。

例えば、「tonight,Walkure(演目名),one,ticket,please」で通じます。その後、どのランク、どの位置という話になりますが、How much? やbest seatとかcheap ticketとかの単語だけでOKです。座席表を見せてくれ、希望の位置を指させばいいこともあります。座席の位置を示す単語(劇場によって呼び名が違います。platea,galleriaなど)は覚えておいたほうがいいです。

②は超人気のアーティスト出演時など極めて稀です。こうした場合は旅行業者に依頼するのもいいでしょう。

但し、ネットでチケット完売していても、ネットや電話で問い合わせると、たいていは「キャンセルチケットをお求めの場合は、1時間前にボックスオフィスに来てください」と言われます。当日になればたいては発売されます。整理券を配る場合もありますので、人気の演目では1時間より前に行って並んだほうがいいです。

③は夏の音楽祭でよくあります。有名なイタリアのヴェローナの野外オペラなど、劇場のキャパに比べて、終演後に歩いて帰れるホテルのベッド数が圧倒的に少ない場合です。これは如何ともしがたいので、旅行会社を頼るほかありません

☆チケットを余した人から買う

②の場合の奥の手として、「チケット求む」と書いた紙を持って列に並んでいると、余ったチケットを「買わないか」と寄ってくる人がよくいます。ほとんどの場合、ダフ屋ではありません。

欧米ではひとりで劇場に出かけることが日本に比べてかなり少なく、ほとんどがカップル、でなければ友人どうしです。そういう文化なのです。そのため、連れが急病や用事、あるいは、誘ったのについてきてくれなかったなどの事情で1枚だけ余ることがよくあります。シーズンチケットの場合は、1回券より安く買えることもあります。

但し、チケットが偽物でないことはその場で確認する必要があります。券面を事前に確認できればいいですが、わからない場合は周りの人に「これって本物でしょうか?」と声をあげて尋ねればいいのです。日付が本日かも確認します。

絶対に行きたいので少しでも失敗する可能性が残るのは嫌だという場合は旅行会社を使えばいいのです。劇場に行く以外の時間は現地の観光に時間を使いたいという場合も、時間を金で買うという意味でいいでしょう。

以上いかがだったでしょうか。皆さんが旅行コストを少しでも抑えて、本場の音楽を楽しむための一助になれば幸いです。