「旅について思うこと」カテゴリーアーカイブ

フライトで眺める世界の絶景

みなさん、海外旅行のフライトでどんな席を選びますか?
私は窓際で、なるべく翼から離れた席です。
窓から眺める景色は、地上で見るのとは全く違ったおもしろさがあります。

トロント発バンクーバー行きでは、カナディアンロッキーの真上を飛びます。ロッキー山脈と湖

いつかは訪れたいヒンドゥークシュ山脈。ヒンズークシュ山脈
最近のヨーロッパ旅行では、安価な中東経由をよく使います。シベリアの凍てついた大地が延々と続く直行便とは違って、高い山脈、砂漠など中央アジアの変化に富んだ地形の上を飛びます。ほろ酔い気分で眺めていると、すぐに時間がたっていきます。

Emiratesフライトマップ

古代からシルクロードを行きかった旅人は見れなかった、現代人の特権です。

ザ・パール・カタールは世界の富豪が集まるリゾートアイランドです。貧しい私は空から眺めるのみ。ザ・パール・カタール

空から見るとベネチアの特異な地形がよくわかります。

空から見たVenezia

ヨーロッパの空は混みあっているようです。ブルガリアの首都ソフィアからミュンヘンまでの1時間あまりのフライトで何度も目視の範囲内ですれ違いました。この写真よりも近い距離もありました。横を飛ぶ飛行機

訪れる街を到着する前に空から眺めると、旅のワクワク感が高まります。ロンドン、ヒースローへの着陸直前。いつもテレビで観ているサッカースタジアムも見えました。

ヒースロー着陸直前

オーストラリアのシンボル、エアーズロック。
2018年、登山禁止になる直前かけこみで訪れました。夕やみ迫る空港に着陸する直前にこれを見たら、すぐにダッシュして岩に取り付きたくなりました。

エアーズロック到着直前

ドバイ着陸直前にはアラビアの砂漠が眼下に広がります。アラビア砂漠

大自然の奇跡のような巨大スケールのイグアスの滝(⇒こんなにすごい!)を楽しんだ後、離陸直後にふりかえると、たき火の煙があがっているように小さく見えました。

空から見るイグアスの滝

 リオデジャネイロからフランクフルトへのフライトでサハラ砂漠の上を飛んだ時、ここに行きたいと思いました。その5年後に実現しました機上から見たサハラ

これが見えると帰ってきたなと思います。成田着の約10分前の夕方、房総沖からです。

夕焼けの富士山

モスクワから成田へのフライトで見た日の出。

アエロフロートから見る朝焼け

旅は目的地に着く前、日本の空港で飛行機に乗り込んでシートベルトを締めた瞬間に始まるものと思ってます。最近、GPS技術が進歩しており、機内WiFiが多くのフライトで使えるようになってますので、地図情報を参照しながら窓からの景色を楽しむのもいいですね。

海外旅行ができなくなって2年近くになりますが、それまでは、この記事の空からの写真で、ちょっとでも海外旅した気分になっていただければ幸いです。

コロナ禍、おうちで海外妄想旅しよう!

なかなかおさまらないコロナですが、多くの国で実質的な鎖国状態が続いています。(2021年6月10在)
海外旅行できるのはまだ先になりそうで、当分は国内旅で我慢するしかありません。

そこで、気晴らしに海外妄想旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。行った気になれそうな旅先をピックアップしました。

☆中世を歩く、ベルガモ(イタリア)

北イタリアのコロナの震源地になったベルガモですが、とても美しい街なのです。丘の上に密集する中世の建物の中を歩くとタイムスリップ感を味わえます。
こちらへ
ベルガモ ヴェッキア広場

☆サハラ砂漠でラクダに乗る(モロッコ)

果てしなく広がる砂漠をラクダに乗って進む。日本では味わえない大自然です。砂漠の中のテントに泊って、地元の料理を食べ、地元の人たちの奏でる民族音楽を聴きます。
こちらへMoroccoサハラ砂漠ラクダの列

☆バスク(スペイン)食い倒れ旅

スペインとフランスにまたがるバスク地方。
その中心サンセバスチャンは美食の街として知られています。街中にたくさんあるバルのカウンターには300円くらいの小皿料理がずらりと並びます。 食べ歩き、その合間に、歴史的な建造物や丘の上からの美しい景色を楽しみます。
こちらへサン・セバスティアンバル

☆モルドバのびっくりワイナリー

世界のワイン名産地を巡って、ぶどう畑に囲まれたワイナリーでワインテイスティングする。トスカーナ、ボルドー、ブルゴーニュ、ナパなどが有名ですが、ここでは、ヨーロッパの辺境の知られざる名産地モルドバへ。ワインもおいしいですが、ここのワイナリーはびっくり!の連続です。
こちらへMilestiMiciワインの泉

☆イグアスの滝(ブラジル・アルゼンチン)

大自然の凄みに圧倒されます。地球の裏側まではなかなか行けませんので、おうちでその一端を味わってください。
こちらへ
イグアス滝の中

動画もあります

☆白夜のサンクトペテルブルク(ロシア)

夜中すぎでも薄明るさが続くというのは不思議な感じです。薄明りの中で歴史的な建物の数々がライトアップされます。元は宮殿だった世界最大級の美術館や豪華絢爛な劇場でアートを楽しみます。
こちらへ白夜のイサク聖堂

☆世界で最も美しい散歩道を歩く(ニュージーランド)

ニュージーランド南島にあるミルフォードトラック。53kmのトレッキングコースは感動の連続です。手つかずの大自然の中、4泊5日のガイド付きツアーできちんと整備された安全な道を歩きます。
こちらへMilford U字谷

☆時の流れが止まった国、キューバ

キューバはアメリカのすぐ南にありながら、50年以上、経済制裁されているため、1960年代から時が止まったような国です。スペイン植民地時代の古い街並みをクラシックカーがふつうに走っています。街のいたるところから聞こえてくるダンス音楽、手つかずの大自然、美しいビーチなど魅力たっぷりな国です。
こちらへハバナセントラル公園と車

☆音楽の都ウィーンでオペラを観る

荘厳な作りの劇場の正面玄関を入るところからオペラは始まります。字幕があるので知らない作品でも楽しめます。
こちらへVienaオペラホール

☆イギリスの美しい田舎を巡る

ロンドンから日帰りツアーでコッツウォルズのかわいい村を訪れると、長年、美しい景観を守ってきた地元の人たちの努力がしのばれます。
こちらへBiburyArlingtonRow2

☆おしまいに

いつになったら海外旅行できるのでしょうか。妄想旅しかできない状況は長く続いてほしくないですよね。日本は欧米よりは被害が少ないとはいえ、緩い対応しかしてこなかったツケがまわってきているようです。

欧米のいくつかの国ではワクチン接種が進み、日本人が隔離機関なしに観光できる国もいくつか出てきそうです。帰国した後の14日間隔離がなくなれば、ようやく海外旅行OKとなります。(2021年6月10日現在)

それまでは、テレビの紀行番組などで妄想旅を楽しむしかありません。このサイトも妄想旅リストに加えていただけるとうれしいです。

 

インバウンドの観光公害を防ぐには人数制限するしかない

合掌造りで有名で、世界遺産にも登録されている白川郷。
昨年初めて訪れてびっくりしたのですが、外国人だらけで、観光客が集まっているエリアでは日本語があまり聞こえてきませんでした。売店の人に尋ねたところ、日本人観光客は少数派になっているとのこと。

あまりの混雑ぶりに、村民からは不満の声が上がっているとのことで、最近、村を一望する展望台に登れる人数を制限するなどの規制を導入したそうですが、一方で、村の中心から徒歩数分のところに大型駐車場を設けたり、今年になって、大型ホテルがオープンしました。どうしても外国人観光客を増やしたいようです。

白川郷に限らず日本各地の観光地で発生している、いわゆる「観光公害」、「オーバーツーリズム」の問題に取り組む必要が認識され始めました。

ヨーロッパを中心に筆者がこれまで訪れてきた、いなかの美しく静かな町や村と比べると、日本の地方の観光地の昨今の状況には疑問を感じます。

☆フランスでは公共交通機関をわざと不便にしている

「フランスの美しい村」をご存じでしょうか?
1982年に設立された「フランスの美しい村」協会が、人口、景観、土地利用などの厳しい制限を満たした田舎の小さな村を認定し、その観光を促進しようというものです。

そのうちのいくつかを訪れたことがあるのですが、とても観光を促進しようとしているとは思えないくらい不便なところにあります。

ワインの名産地で、中世の建物が多く残り、世界遺産にも登録されているフランスのサンテミリオン(Saint-Emilion)は、近くのフランス第5の都市ボルドーから40kmほどのところにあるのですが、ボルドーからの電車は1日10本弱で、サンテミリオン駅から村まで約2kmは公共交通機関がありません。サンテミリオンへの道1

ボルドーからサンテミリオンの村の中心まで直行するバスもあるのですが、朝夕限定の1日3~4本だけ。土日祝日はさらに本数が減ります。
(サンテミリオンについては⇒こちらへ

他の美しい村も状況はほぼ同じです。巡礼の村として有名なコンク(Conques)は平日のみの1日1本しかバス便がありません。

わざと公共交通機関を不便にしているとしか思えません。

不便を忍んで来てくれた人だけに、美しい景観と文化財を見せてあげる、最高の体験をさせてあげるということです。

サンテミリオンもコンクも村の中に大型ホテルはなく、昼間はバスツアーで訪れる観光客がたむろしていても、朝夕は静寂そのもの。みやげ物店はありますが、通りに張り出した看板など、景観を損ねるものは一切ありません。オーバーツーリズムによる村の俗化を避けようフランス人の知恵と言えるでしょう。

白川郷とはあまりに発想が違います。

☆便利さを追求する弊害

観光客に来てほしい一心で、アクセスを便利にし、ホテルやみやげ物店など観光客用の施設を作っていくと、そこの景観はどんどん崩れていったり、そこの住民の平穏な生活が脅かされたり、最悪は、土地の値上がりで元からいた住民が住めなくなったりすることがあります。

日本は外国人観光客の数を増やすことばかりに熱心で、文化や景観を大事にしようとする思いがあまりに希薄です。

☆不便でも来たい外国人観光客は来る

フランスの例でもわかるように、いくら不便でも、その土地の景観、文化、歴史に関心があれば外国人観光客は来ます。

むしろ、ただ有名だからという理由で来る外国人観光客は、その土地の文化へのレスペクトに欠けて、マナーがよろしくないこともあるので、減らしたほうがいいでしょう。

先日、奈良の東大寺大仏殿で、境内入口に座り込んでいるのを係員に注意されている中国人観光客が多数いました。

アクセスを不便にして訪れる人数を制限する

のは、観光公害、オーバーツーリズムへの対策として有効です。

入場料、拝観料を高額にして、ほんとうに観たい人だけが観れるようにする

ことも考えられます。現在、日本の神社仏閣、庭園、古い建築物への入場料・拝観料は、ヨーロッパの同種の文化財と比べて破格の安さです。昨今の円安、インフレでその差は益々広がっています。

文化財を管理している施設の人たち、それがある地方自治体の役人たちにはヘンな思い込みがあるようです。祖先が作り上げた偉大な文化財をできるだけたくさんの人に観てもらいたいというものです。

それは、拝観に訪れる観光客が、同じような文化を共有していることが前提になりますが、昨今のツーリズム全盛の時代にはそぐわない考え方です。

「金持ちだけしか観られないのか」との批判もあるでしょうが、気にする必要はありません。私たちは自由主義経済の世界で生きているので、価格によって需要(入場したい観光客数)をコントロールするのは当然です。どうしても値上げに抵抗あるなら、くじ引きにする手もあります。京都の桂離宮などで一部の寺社では実際にそうしています。

この先の低成長経済を考えると、インバウンド観光を促進しようという政策意図はわかります。しかし一方で、観光公害を抑制し、地域住民の生活と折り合いをつけるに目指すべきは外国人観光客の数でないことを認識すべき時にきています。

インバウンドで地方創生に思うこと

最近よく聞く「インバウンドで地方創生」。
これまで30年あまり、ヨーロッパを中心に世界を旅してきた筆者には奇妙に思えます。

☆「インバウンドで地方創生」の根底にある発想

地方の産業は衰退し、人口が減って、どこの地方自治体も財政的に苦しく、将来は維持困難になる状況にあります。そこで、この数年激増している外国人観光客を地方へ呼び込み、彼らに地方でたくさん消費してもらうことによって、地方経済を活性化しようというものです。

インバウンド観光は、首都圏~富士山~京都・大阪のいわゆる「ゴールデンルート」に集中しているので、これを地方に分散させようということです。

☆発想自体が間違っている

この発想って、どこかで聞いたことがありませんか? そう、1960-70年代の高度成長期の後半に、太平洋ベルト地帯に集中しすぎた産業を地方に分散化することで、国土の均衡ある発展を図ろうとする政策です。

産業の立地は、インフラの整備状況、当該企業が求める労働力の有無、製品・サービスの市場との地理的な距離によって決まります。ほとんどの企業は合理的な基準によって、生産、販売をどこで行うかを決めます。

一方、外国人観光客が日本のどこを旅するかの合理的な基準はありません。個人個人が行きたいところに行くのです。観たいものがあるところ、希望のアクティビティができるところに行くのです。予測は極めて難しいと言えます。

最近、日本人が思いもよらない場所に外国人観光客が集中することが起こっています。例えば、鎌倉の江ノ電の踏切に台湾人がたむろしているのが話題になりました。台湾で人気のアニメの舞台になっているからです。外国で人気の日本アニメの舞台になっているところは鎌倉高校前以外にもいくつかありますが、ここにこれだけ多くの台湾人観光客が集まる合理的な理由を見出すことはできないでしょう。

外国人の最初の訪日観光旅行では有名な観光地が目的地となります。これがゴールデンルートです。イタリアを観光する日本人が、まず、ローマ、ベネチア、フォレンツェといった定番観光地を訪れるのと同じです。

最初の訪問に満足して、二度三度と日本に観光に訪れる人たちの選択肢として初めて地方が浮かびます。但し、必ず選択肢になるわけではなく、地方には行かず、最初の訪問時には時間的制約で行けなかった東京や京都の観光地を次に訪れようという観光客もいます。同じ観光地の深堀りということです。

地方に外国人観光客を呼び込もうとするなら、外国人観光客を惹きつけるコンテンツをアピールし、ないのであれば何をどのように準備するかを考えるが第一歩です。

産業誘致は、道路などのインフラ整備とセットで考えられていましたが、昨今のインバウンド誘客では、ただ「おもてなしするから来てください」だけです。

案内標識を多言語化しようとか、WiFiを整備しようとしているところはありますが、インバウンド誘客にとって本質的なことではありません。案内標識が日本語だけでも、WiFiがなくても、魅力的なコンテンツがあれば外国人観光客は訪れるのです。

☆「おもてなし」では地方に外国人観光客を呼べない

東京オリンピック招致に成功して以来、観光業関係者が「お・も・て・な・し」をやたらと口にするようになりました。インバウンド誘客に力を入れる自治体関係者も同様です。

しかし、日本を観光旅行しようとする外国人観光客が訪問地を選ぶ基準に「お・も・て・な・し」はありません。外国人観光客は、
・観たい
・したい
ものがあるところを訪れます。「お・も・て・な・し」はあれば尚可くらいです。

われわれがイタリアやフランスを観光しようとする時に、どこを訪れるかを考えてみれば当然のことです。「北イタリアのブレシアに宿泊すればイタリアNo.1のおもてなしが受けられます」という宣伝文句を聞いて、ブレシアを訪れよう、泊ろうという日本人はほぼ皆無でしょう。北イタリアを観光旅行する日本人の大部分はミラノ、ベネチア、トリノに泊ります。日帰りでもブレシアを訪れる日本人観光客はほとんどいません。ミラノ、ベネチア、トリノには街の景観、文化財など日本人観光客の観たいものがあり、買い物、オペラ観劇、サッカー観戦などのしたいことがあるからです。(ブレシアも魅力的な街だと筆者は思っていますが)

☆外国人向けコンテンツを一から創造するのは難しい

ないなら創ればいいでしょう、と言われそうですが、これがなかなか難しい

観光庁の調査によれば、外国人観光客が日本を訪れる目的は、①食事 ②ショッピング ③自然や景勝地の観光 ④街歩き ⑤温泉 です。

これに対応したコンテンツがあることが外国人観光客誘致の最低条件です。①②は、「その地方にしかない」ものが食べられるか、買えるかということです。全国津々浦々多くの温泉があることを考えると⑤も同様でしょう。これらを外国人観光客を狙って新たに造り出せるでしょうか?

確かに、観光客をターゲットにした施設などを新たに作って誘客に成功した事例は存在します。

伊勢神宮の前に江戸から明治期の伊勢路の建築物を移築などで再現して観光名所にした、あるいは、空港近くにショッピングモールを作って、爆買いの外国人観光客を招き寄せた、といった成功例はあります。

将来も、海外で人気になった映画、アニメ、ドラマのロケ地が突如、外国人の人気スポットになることはありえますが、狙って作れるものではありません。

つまり、

☆インバウンドで地方創生するには今あるコンテンツを商品化、カスタマイズする

しかないのです。

自然の景観に恵まれているところ、外国人が惹かれそうな古い街並みが残っているところ(例:京都、白川郷、川越)は現状を保全する努力が重要で、商品化・カスタマイズは説明資料(紙、ネット)と案内標識の多言語化、ガイドの養成くらいでしょう。

商品化、カスタマイズの例としては、

☆郷土料理を外国人向けにアレンジして提供するレストラン

☆地元の工芸品作りの体験教室

☆古くからある酒蔵巡りツアー

☆里山を巡るサイクリングツアー

といったことは実際に取り組まれています。

海外に向けてのプロモーションや、案内標識の多言語化に金をかける前に、その地方に外国人向けに提供できるコンテンツがどれだけあるかを棚卸し、それを外国人向けに商品化、カスタマイズする計画を立て、実際にやってみることが必要です。

外国人向けカスタマイズして提供できるコンテンツがない地方は、インバウンドによる地方創生は諦めるしかないのも現実です。

長らく日本の国土政策の基本理念となってきた「国土の均衡あり発展」をインバウンド観光に適用しようとするのは大間違いです。外国人観光客が楽しめるコンテンツがあって初めて地方に外国人観光客を誘致するプロモーションができるのです。