タタールスタンに行ってきました。
と言うと、それ、どこ? ってよくきかれます。
タタール人はロシアで最大の少数民族で、トルコ系のイスラム教徒です。キリスト教が大多数を占めるロシアの他の街とは一味違ったエキゾチックな雰囲気を期待して、2018年6月、タタールスタンの首都カザンを観光に訪れました。
☆まずは、カザン・クレムリンへ
クレムリンと言うとモスクワが有名ですが、クレムリンとは「城塞」という意味で、ロシア各地にあります。
カザンのクレムリンはモスクワと同様に、河べりの小高い丘に築かれていて、まるごと世界遺産になっています。
城塞内にロシア正教の教会とイスラムのモスクが並び立っていて、カザンという街の成り立ちを象徴しています。
クルシャリフ・モスクは、近くで見上げると、覆いかぶさってくるようです。
内部は巨大な空間。2005年の再建ということで、古めかしさはありませんが、荘厳な空気が流れています。
階段で天井近くまで登って見下ろすこともできます。外も内も青を基調とした装飾でした。
夜の風情は期待通りエキゾチックで見とれてしまいました。他の建物もライトアップされています。
一方のキリスト教。たまねぎ型の屋根とカラフルな配色が特徴のロシア正教の教会です。
聖職者限定の聖なる空間と一般人が入れるエリアが正面のイコン(聖画)で区画される、正教の典型的な造りです。
カザン・クレムリンの入り口、「スパスカヤ塔」。
ここから入ると広い一本道が続き、その両側にモスク、教会などさまざまな建築物が建ち並びます。
カザン・クレムリンにはいつでも入れますが、教会やモスクなどの建物は夕方になると閉まります。
大統領宮殿では今もタタールスタン共和国の大統領が執務しています。
近年、ロシア連邦内部で自治権が縮小され、公式には大統領とは呼ばれなくなったそうですが。
歴史的な建造物が建ち並ぶ街を見下ろせるカフェ。観光客がたくさんいました。
この下の川べりには遊歩道が整備され、気持ちの良い散歩が楽しめます。
☆カザンを歩く
散歩の途中にこんな荘厳な宮殿が現れました。
タタールスタン共和国の農業関係の役所として使われているので「農業宮殿」と言われています。
川にかかる橋から見たクレムリン。
白い城壁が夕焼けに染まります。
☆タタール人居住区へ
タタール人が住んでいたエリアに行ってみました。緑を基調としたモスクのまわりの家々はロシア人たちの普通の住居とは雰囲気が違います。
平日の午前中のせいもあってか、地元の人たちも観光客もまばらで、きれいに飾られた通りをゆったり散策できました。
☆カザンの中心街
今のカザンは人口約120万人のロシアでは4番目に大きな都市です。ヨーロッパの街の常で、街の中心の広場がありますが、カザンでは「トゥカイ広場」です。
遠くにクレムリンも望めます。この通りからクレムリンまでの約1kmの「バウマン通り」がカザンのメインストリートで、両側にいろんなお店が建ち並び、朝から夜遅くまで賑わっています。
「カザンの塔」もバウマン通りに建っています。闇夜に浮かび上がる夜のほうが趣あります。
☆タタールスタンを食べる
タタール人は1000年以上前に中央アジアから移ってきた民族ということもあって、食文化にはアジア的な特徴があります。レストランのメニューにはロシア料理として知られているものが多く並んでますが、店員にどれがタタール伝統の料理なのかをきいてみました。
「エシボシマク」は肉、ジャガイモ、タマネギが三角形のパン生地で包み焼かれたもので、レストランだけでなく、スーパーや街なかのスタンドでも売っています。タタールスタンのファーストフードのようです。
肉料理の付け合せかと思ったら、「クストゥブイ」は小麦の薄い生地にジャガイモのペーストが包まれていました。
☆カザンへの行き方
モスクワから夜行列車で行くと12-13時間かかります。カザンの駅から街の中心トゥカイ広場へはバスか路面電車で10~15分です。
夜行列車の食堂車では軽食が取れ、お酒も飲めるので、それなりに快適なのですが、長時間横になってガタゴト揺られるのがつらい方はフライトになります。
モスクワからカザン空港へは約1時間半のフライト。空港からは電車があるのですが、1時間半に1本くらいしかなくて不便です。バスと地下鉄を乗り継いで行くこともできますが、乗り換えの地下鉄駅が終点ではないので、暗くなってからの到着だと苦労します。
☆安全なスタンへ国行ってみよう!
「スタン」のつく国って、いくつかありますが、なんだか危なそうな印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。いつも民族紛争とかテロやってそうとか。
「スタン」国の多くは中央アジアにあって、1990年代のソ連崩壊とともに独立しましたが、タタールスタンはロシアの真っただ中にあったため、独立せず、平和裏にロシアの中の自治共和国にとどまりました。
独立した中央アジアのスタン国にはイスラム過激派が入り込んだりして、かならずしも安全ではないのですが、タタールスタンは治安が安定してるロシアの中にあるので安心して旅できます。
首都カザンは2018年サッカーワールドカップの会場のひとつになったこともあって、公共の場に英語の併記が進み、観光旅行しやすくなりました。
バウマン通りには観光案内所もあって、英語のガイドのついた市内観光、エクスカーションも多数あります。
西欧の名所観光に飽きた方にはタタールスタンはお薦めです。