スヴィヤシュスク(Sviyazsk)はロシアのいなかに忽然とあらわれる宗教の村です。(⇒地図1)
ロシアの大河ヴォルガに浮かぶ要塞の島に、キリスト教の修道院や教会が建ち並びます。内部の装飾にはロシア正教の粋を感じられます。
☆スヴィヤシュスクのあるタタールスタン
タタールスタンはロシアで最大の少数民族タタール人の自治共和国です。とは言え、ロシア人も人口の半分近く住んでいて、ロシア正教のキリスト教とイスラム教の文化が混ざりあったところです。(詳しくは⇒こちらへ)
スヴィヤシュスクから眺めるヴォルガ川。
その向こうに広がる大地に、小さく見えるネギ坊主屋根の教会。ロシアらしい景色です。
スヴィヤシュスクはタタールスタンの首都カザン経由で訪れます。
☆スヴィヤシュスクを歩く
スヴィヤシュスクはヴォルガ川に浮かぶ島と言われますが、今では川の水位が下がって細い長い陸続きです。(⇒地図2)
バスは要塞の下に着きます。
筆者が訪れたのはサッカーワールドカップの開催期間中で、ロシアにはいつも以上に観光客がいるはずでしたが、村の唯一の駐車場にこれだけしかいませんでした。
入ってすぐのところにあるのがウスペンスキー大聖堂を中心とする教会と修道院の建物群。ウスペンスキーは「生神女就寝」と訳されます。
内部のフレスコ画が見事とのことですが、筆者が訪れた時は修復中とのことで入れませんでした。
スヴィヤシュスクで最も大きなカテドラルには入れました。「Cathedral of Icon of the Mother of God Joy of All Who sorrow」と英語表記されていましが、なんと訳すのでしょうか?
トロツカヤ(Trinity)とはキリスト教の「父と子と聖霊」の三位一体を意味します。その内部を歩くとミシミシと足音がします。石造りの教会とは空気感が違う気がしました。
一周ぐるっと歩いて30分くらいの島の中には、この他にもいくつもの教会建築が残っています。
☆スヴィヤシュスクの歴史
スヴィヤシュスクの町は、16世紀にモスクワを中心に膨張を続けるロシアの皇帝イワンが、西方のイスラム勢力(カザンハン国)を攻略するための前線基地として築きました。カザン攻略後は、この地域にキリスト教を広める中心となり、教会や修道院がたくさん建てられました。
宗教を否定したソ連時代には、政治犯の収容所や精神病院として使われましたが、ソ連崩壊後、宗教施設としてよみがえりました。
2017年には「スヴィヤシュスク島の聖母被昇天聖堂と修道院」として世界遺産登録され、地元の政府は観光に力を入れ始めています。
建物の説明書きはロシア語、タタール語、英語が併記されています。
しかし、モスクワやサンクトペテルブルクなどのロシアの主要都市から遠いため、訪れる人はまだ少ないようです。
☆スヴィヤシュスクへの行き方
スヴィヤシュスクはこの地方の中心都市カザンから西方に直線距離で30Kmほどで、船で約2時間(日に1、2便)です。ヴォルガ川からの雄大なロシアの平原を眺めながらの船旅です。
筆者はカザンの港でスヴィヤシュスクへの切符を買おうとしましたが、英語が全く通じず、なんとかわかる人を探して通訳してもらいましたが、今日は満席ということでした。
そこで、カザンの街の中心から英語ガイド付き1日ツアーでスヴィヤシュスクを訪れることになりました。
片道1時間半、ガイドについて1時間くらい案内してもらった後、自由時間が1時間半ほどありました。船でフリーで来ると4~5時間滞在できるのに比べて、あわただしい気がしました。
カザンへはモスクワからフライトで約1時間半、夜行列車で12~14時間です。
筆者の場合、お昼12:00に成田発、モスクワ乗継で夜9時にカザンに着きました。
スヴィヤシュスクは日本ではほとんど知られておらず、日本から訪れる人も少ないですが、ロシアの宗教文化を肌で感じられるとともに、島から眺めるヴォルガ川と雄大なロシアの平原の景色も魅力的です。
秘境と言っても、人口120万人の街から2時間でアクセスでき、地元の料理が食べられる軽食カフェもありますので、快適な滞在を楽しめます。