メドックマラソン(Le marathon du Medoc)はワインを飲みながら42.195kmを走る大会です。フランスのワインの名産地に広がるブドウ畑とシャトーを駆け抜けます。
ここ数年増えているフルマラソンの大会では、数キロごとに給水所(エイドステーション)が設けられ、水とともに軽食がふるまわれるのですが、メドックマラソンでは、これが給ワイン所!なのです。
筆者が完走した2016年大会の様子をご紹介するとともに、今後、個人で参加される方のために、エントリー方法から当日の快適な過ごし方までご案内します。
☆メドックってどこ?
メドックはフランス南西部ボルドー(Bordeaux)の北に広がる地区で、ぶどう畑が一面に広がる中に小さな街、村が点在します。
☆メドックマラソンって、どんな大会?
タイムを競う大会ではありません。毎年、主催者からお題が出されて、それに則った仮装をして走ります。2016年は「Tales and Legend」でした。必須ではありませんが、参加者のおよそ8割はなんらかの仮装をしているという印象です。
人目を引く、おもしろいかっこうをして、エイドステーションで出されるワイン、おいしい食物を味わいながら楽しく走ろうという大会です。
2016年は参加者8000人、うち3割が外国人。日本人もかなりいます。毎年9月の第2土曜に行われるので、年によっては最高気温30℃以上の厳しいコンディションになることもあります。
制限時間は6時間30分。気温が高い場合は延長されることもあります。
☆ワインと、世界一の補給食!
エイドステーションはおおよそ2kmごとにあります。食物もかなり充実しています。たいていの大会でもあるクラッカー、バナナ、ポテトチップスだけでなく、チーズ、ハム、牡蠣、ステーキ、オレンジ、ローストビーフ、アイスクリームなどなど。 完走すればほとんどフレンチのフルコースです。
コース途中のシャトーの門を入って、シャトーの中庭にエイドステーションがあるというパタンが多い。
応援してくれる人、ハイタッチを求める人も多く、マラソンパーティという感じの大会です。
☆スタート&ゴール地点、ポーリヤック(Pauillac)
メドックマラソンのスタート&ゴール地点で、前日の受付も行われるのが、ボルドーから北へ約50キロの小さな街、ポーリヤック。ポーイヤックと表記されることもあります。
この街の宿泊キャパは小さいので、多くの参加者はボルドーに泊って、バスでポーリヤックまで来ます。
ボルドー/ポーリヤック間は路線バス、列車もありますが、本数が少なく、夜はありませんので、大会事務局が用意するシャトルバスで移動したほうがいいです。
続いて、エントリーから大会当日までのガイドです。
☆メドックマラソン申し込み
毎年2月頃にネットでエントリーが始まります。
*大会エントリーのみ
*前日と当日の宿泊とのパック
の2通りで申し込めます。
ホテルは一覧から指定できますが、スタート地点のポーリヤックとその近くはすぐにいっぱいになってしまいます。前日夜のパーティ、当日のボルドーからの送迎もオプションで申し込めます。
旅行会社に、大会エントリー、宿泊、ポーリヤックまでの送迎を一括して申し込むこともできます。大会前後のワイナリー巡りツアーなどもオプションで付けられます。ガイドさんが付いて至れり尽くせりですが、料金は割高です。
申し込みの後、所定の期日までに「Medical Certificate(健康診断書)」を取得して、大会事務局HPでアップロードします。
☆メドックマラソン前日
前日に受付(ゼッケン、Tシャツなどの受け取り)のためにポーリヤックに行く必要があります。参加者本人に限ります。6月頃に大会事務局から、ボルドー/ポーリヤック往復のバス予約のお薦めメールがきます。2016年はボルドー発12:00/14:00/16:00でした。
前夜祭のパーティを申し込んだ人は、パーティ後の帰りのバスもここで予約できます。
周辺にはいろんなお店が出てにぎやかです。ワインテイスティングもありました。
前夜祭のパーティは2か所で行われます。世界各国からの参加者と交流できるのはメドックマラソンの楽しみのひとつです。
ポーリヤックの受付場所からは事務局の用意するバスでパーティ会場まで行くことになります。
ご注意ですが、パーティに出ると帰りがとても遅くなってしまいます。2か所の会場からボルドーに帰るバスは夜10:30~11:30発です。日付が変わってからボルドーのホテルに戻ることになり、翌朝、ポーリヤックに向かうバスは6:00か6:30発ですので、フルマラソン前夜の睡眠が十分とれないことになります。
☆メドックマラソン当日
まず、朝食です。自分のコンディション調整に合った食物を用意するのもいいですが、スタート地点の近くで朝食を提供する店がいくつかありました。
2016年は、走りだしてすぐのエイドステーションでクロワッサンやカヌレを出してくれるところもありました。エイドの食物は充実しているので、スタート前に無理に腹ごしらえする必要はないと思います。
水をペットボトルごと渡してくれるエイドステーションもあるので、スタート時は手ぶらでOKです。
スタート地点では、日本の大会のように、申込時の予想タイムに基づいてスタートエリアが指定されることはなく、早い者勝ちで前に行けます。
トイレが少ないのがこの大会の難点。ぶどう畑でするしかありません。
楽しい大会ですが、ぶどう畑の間のコースは凸凹の多い砂地で、乾いていると砂埃が舞います。シャトーに入ると玉じゃりの所が多く、意外な所で滑ったりしますので、ご注意を。
☆仕事の都合で参加できるか不確定な方へ
メドックマラソンは人気の大会なので、迷っているうちに締め切られてしまいます。「エントリーのみ」から先にうまっていきます。キャンセルの保険をつけることもできますが、かなり面倒で、全額は戻ってきません。
大会が土曜で、金曜午後に受付に行かなければならないので、遅くても金曜朝にはパリに到着する必要があります。日本発フライトのタイムリミットは木曜の夜行便です。
この時期に仕事を休めるか、エントリー開始の2月時点ではわからない方にお薦めなのは、エントリーが始まったらすぐに「エントリーのみ」を押さえてしまうことです。エントリーのみであれば、費用はおよそ1万円を少し越えるくらいで、行けなくなったとしても捨てるのはこれだけです。
当日と前日の送迎は、6,7月頃に事務局からの案内があって、その時点で付けることもできます。但し、年ごとに事情が違う可能性あり、確認が必要です。
ホテルは場所とグレードを選ばなければ直前でも確保できます。メドックマラソンはボルドー地区外から数千人が訪れる、この地方では大きなイベントですが、ボルドー市内の宿泊キャパは大きく、メッセなどの他のイベントと重ならない限り、問題ありません。
さて、いかがでしたでしょうか。残念ながら、2020/2021年は続けて中止になり、大会HPには「2022年9月10日に会いましょう」のメッセージが出ています。この記事が、コロナ終息後、のどかな風景の中で、マラソンとグルメを同時に楽しむ一助になれば幸いです。