イストラ半島を巡る旅をしてきました、と言うと、
それ、どこ? って何度もきかれました。
日本ではほとんど知られてませんからね。
地中海に突き出たイタリア半島の右横で、やはりアドリア海にちょこっと突き出ているのがイストラ半島です。
⇒地図
イストラ半島は大部分がクロアチアですが、つけ根の一部がスロベニアとイタリアです。第二次大戦までは全部イタリアだったので、イタリア語が併記された標識をよく見かけました。イタリア語ではイストリア(Istria)半島となります。
古代ローマ、中世のベネチア共和国、近世のハプスブルク帝国と、ヨーロッパの歴史を彩る大国の痕跡を感じるイストラ半島の旅でした。(2019年7月)
☆トリエステ(イタリア)
イストラ半島を巡る旅のスタートはイタリア西端の街、トリエステ(Trieste)。イタリア領が海沿いにスロベニアに食い込んでいます。国境まで2Kmもありません。⇒地図
ヨーロッパの街はどこでも街の中心になる広場があって、住民の憩いの場になってますが、イストラ半島の海辺の街では、広場は海に面しています。
トリエステのウニタ・ディタリア広場は、海に開けた一方以外は重厚な石造りの古い建物に囲まれています。
広場の真ん中に立ってみると、海風を感じながら、三方から歴史が覆いかぶさってくるようです。
そのうちのひとつが市庁舎。全体を外から照らすのではなく、建物の凹凸が浮かび上がるような細かなライトアップがみごとでした。
サン・ジュストの丘からは、旧市街が見下せます。
トリエステはイストラ半島では最も大きな街です。18世紀からハプスブルク帝国の重要な港町として発展しましたから、港湾の施設は大型クルーズ船や貨物船が余裕で入れるくらい大規模です。
トリエステから船に乗って、イストラ半島を巡る旅が始まりました。観光船ではなくて、地元の人たちが日常の足として使っている船なので、景色を楽しめるオープンデッキの甲板がなかったのが残念でした。
☆ピラン(スロベニア)
トリエステからの船は1時間ほどでピラン(Piran)に着きます。乗船する時にイミグレーションは通っているので、ノーチェックで降りられます。
筆者が泊ったホテルは、街の中心タルティーニエフ広場に面していました。部屋からは広場とその後ろの丘に建つ聖ユーリ教会が眺められました。
さらに高いところからは城塞がピランの街と教会を見下ろします。
城塞から眺める、青い海と赤茶の屋根のコントラストは鮮やかで、いつまでも記憶にとどまりそうです。
海辺から丘までは細い道が迷路のように入り組んでいます。散歩していると、いつの間にかもと来た道に戻ってしまうのがおもしろい。
☆ポレチュ(クロアチア)
ピランからさらに船で1時間弱でポレチュ(Porec)に着きます。
モザイク画が残る世界遺産の教会がある街です。
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☆モトブン(クロアチア)
いったん海沿いを離れ、イストラ半島の真ん中にある、中世で時が止まったような丘の上の街、モトブン(Motovun)を訪れました。
公共交通機関のバスが運行していない時期だったので、ポレチュから半日ツアーで行きました。
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☆ロビニュ(クロアチア)
ポレチュからバスで40~50分でロビニュ(Rovinj)に着きます。バスターミナルから旧市街の入り口まで、こんな景色を見ながら歩いて10分ほどです。
青い海に中世の街が浮いているようです。このあたりにはテラスのカフェ、レストランが並んでいますので、これを眺めながらゆったりすることもできます。
丘の上から見るとこうなります。
ロビニュにも他のイストラ半島の街と同じように海に開けた広場(チトー元帥広場)があって、その一角に旧市街への入り口の門があります。
ここから丘の上の教会までは石畳の細い路地が入り組んで迷路のようです。道の上にも住居が張り出しています。中世の頃から狭いエリアに人が集まって住んでいたことがわかる造りです。
丘まで登っていく途中に、石造りの古い建物の間から海が顔を出します。夕暮れ時で、地元の人たちがくつろいでいました。
夜遅くまで店の多くはオープンしていて、人通りは絶えません。9時10時になっても子供連れが多いのが驚きです。家族で食事しているのもよく見かけました。
バーに入って、地元産のワインを飲んで、ほろ酔い気分で夜の街を散策しました。
☆プーラ(クロアチア)
ロビニュからバスに乗って、イストラ半島の先っぽにあるプーラ(Pula)にむかいました。所要40~50分です。
プーラはイストラ半島の他の海辺の街とはちょっと違い、中世ベネチア共和国ではなく、古代ローマの香りがする街です。1世紀に建てられた円形劇場があります。
ローマのコロッセオを小さくしたような劇場で、保存状態が良く、今も夏場にはコンサート会場などとして使われています。
ローマ時代のセルギウス門。
この他にもローマ時代の名残が街のそこかしこに見られます。メインストリートに面した教会の回廊にこんな壁画がありました。
街の中心フォーラム広場は、市庁舎などの古い建物に囲まれ、テラスのカフェが並ぶ、プーラで一番にぎやかなエリアです。ここの一角にあるアウグストゥス神殿はキリスト教化される前のローマ建築で、高い円柱がひときわ印象的です。
城塞が街を見下ろします。
ここから見える景色も、他のイストラ半島の街と同様にみごとです。登ったところに生ビールを売っているバーがあったので、飲みながら城塞を歩きまわることができました。
☆イストラ半島への行き方
観光ガイド本やネットの記事には、クロアチアの首都ザグレブから出かける話が載っていますが、実際にはイタリアからのアクセスのほうが便利です。
筆者はトリエステから船で行きましたが、一大観光地ベネチアからもピラン、ポレチュ、ロビニュ、プーラなどへの船便はたくさんあります。
ザグレブからバスで出かける際は、所要時間にご注意ください。クロアチアのバスは複数の会社が運行しており、値段が異なるだけでなく、経路や停車場が異なり、それによってザグレブから同じ街に行く場合でも所要時間が大きく異なります。
⇒クロアチアのバス時刻表
長距離を走るバス便では、遅れは頻発しますので、プランニングの際は時間の余裕をもっておくのも必要です。
国境をまたぐ場合、特に、クロアチアからEU域内のスロベニアに入る時のパスポートチェックが以前より格段に厳しくなり、乗客全員いったんバスを降ろされてパスポートコントロールを受けることもありますので、国境越えのバスは定刻通りに着かないと思っておいたほうがいいでしょう。
こういった多少の不便を忍んでも、イストラ半島の旅は魅力です。日本にはほとんど入ってきていないイストラ産ワインを飲みながら、ヨーロッパの歴史を感じる旅でした。
みなさんもいかがですか。