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ロシアワールドカップ観戦記

盛況のうちに幕を閉じた2018年、サッカー・ロシアワールドカップ。

ワールドカップは最高水準のサッカーを楽しめるだけでなく、世界各国から訪れるサッカーファンとも交流できる魅力的なイベントです。その国を肌感覚で知ることもできます。

筆者は4年ごとに居ても立ってもいられなくなり、ロシアワールドカップでは4都市を訪れ、4試合を観てきました。

6/30カザン (R16) フランスvsアルゼンチン
7/1モスクワ (R16) スペインvsロシア
7/3サンクトペテルブルク (R16) スイスvsスウェーデン
7/7ソチ (準々決勝) ロシアvsクロアチア

ワールドカップ開催中のロシアがどんな様子だったのかを筆者の視点でご紹介します。

☆サッカー・ワールドカップはお祭りです

サッカーのワールドカップは一種のお祭りです。スタジアムの席に座ってサッカー観戦するだけでなく、その前後の時間、開催都市の雰囲気も心浮き立つ楽しさです。閉ざされた官憲国家というイメージの強いロシアでも例外ではありませんでした。

スペインvsロシア戦の2時間前のスタジアム前の様子。ファンたちがチャントを歌ったりして友好ムードでした。Russiaお祭りムード1

ロシアvsクロアチア戦の試合前には、スタジアム前で民俗音楽の演奏が行われていました。Russiaお祭りムード2

開催都市は歓迎ムードいっぱいでした。 Russia歓迎

ワールドカップ史上最弱のホスト国と言われて、国民の期待が高くなかったロシア代表ですが、勝ち進むにつれて、ロシア人たちのボルテージは上がりました。Russiaロシア戦

ロシアがスペインに勝った夜、モスクワ中心部の噴水に飛び込むロシア人たち。Russia噴水に飛び込むロシア人

 ☆スタジアム内の様子

ピッチまでの距離を感じさせない、すばらしいスタジアムばかりでした。陸上トラックがないのがいいですね。

スタンドでは、応援するチームのチャンスの場面では立ち上がる観客が多く、こちらもそれに合わせて立ち上がります。Russia立ち上がるファン

アルゼンチンの同点ゴールの場面では、あちらこちらからビールの噴水が上がりました。喜びのあまり、飲みかけを周囲にぶちまけるのです。

案内係の人たちはカタコト英語でしたが、みなさん親切で、マナーの良くない人に注意するなど、観客が快適に観戦できるように気を配っていました。

場内ではお酒も飲めました。ビールは大きなカップにつがれ、ソフトドリンク類はキャップを抜いたペットボトル、大きなカップの提供でした。Russiaビール

☆ロシアという国

いまさらながらですが、ロシアは広い。
ロシアワールドカップの10の試合開催都市はヨーロッパ側に寄っていたとはいえ、都市間の距離は、電車やバスで簡単に移動できるものではありませんでした。Russia開催都市地図

(出典:FIFA)

例えば、首都モスクワから最も南に位置するソチ(Sochi)までは約1700kmで、列車で38~41時間です。飛行機で移動するしかなく、2時間20分のフライトでした。

そして、ロシアは個人客が旅しにくい国でもあります。専門の旅行会社を通して、滞在するホテルと現地移動の交通機関を予約して、それらを証明する書類をもらったうえで、大使館に出向いてビザを取得しなければならないという複雑かつ時間を要する手続きが必要です。

ところが・・・・・

☆ロシアワールドカップ・チケットとFAN ID

ワールドカップ期間中はこの手続きが大幅に簡略化されました。主催元FIFAのWebページでチケットを買うと、ロシア入国と試合観戦には「FAN ID」が必要と案内されます。

テレビで試合をご覧になった方は、スタンドの観客たちがみんな首からこんなものをぶら下げていたことにお気づきでしょう。dav

取得するのはとても簡単で、所定のWebページで氏名、パスポート番号などを入力し、写真をアップロードすると、自宅まで送料無料で送られてきました。

このFAN IDがロシア入国のビザ替わりになるとともに、これをぶら下げていることでロシア滞在中にさまざまな特典が受けられました。試合開催日は試合開催都市でバスや鉄道が無料で、開催都市間を移動する夜行寝台列車にも無料で乗れました。

寝台列車ではビュッフェ車両で軽食がとれ、酒類の販売もあって、長時間乗っていても快適でした。Russia Free Ride

筆者のロシア初日は、夜9時頃にカザン空港に到着でしたが、ボランティアの若者たちが市内までの無料バスの案内をしていました。Russiaカザンのボランティアさん

Russia空港からの送迎

☆異様に明るいおもてなし

スタジアムに着くと若い女性たちがハイタッチでお出迎え。Russiaハイタッチ1

スタジアムだけでなく、無料の夜行列車で到着したホームでも。「モスクワにいらっしゃいー!」Russiaハイタッチ2

開催都市の街中のあちこちにこんなブースやテーブルが設けられ、英語を話せる若者たち(約8割が女性)が、スタジアムへの行き方だけでなく、街の観光案内もしていました。Russia観光案内1

「この近くに大きいスーパーはありませんか」という筆者の質問にも的確に対応してくれました。

駅にもありました。到着した観客にホテルまでの行き方、スタジアムへのアクセスなどを説明していました。dig

ロシアという国のイメージを覆す、至れりつくせりでした。

☆予想以上の厳戒警備

ワールドカップはロシアの国の威信をかけた大イベントですから、厳戒態勢の中で行われることは予想していましたが、想像以上でした。

スタジアム入場の際の手荷物検査とボディーチェックは、今やどこの国のスタジアムでもありますが、開催都市のターミナル駅やすべての地下鉄駅に入るのにも厳格な検査が行われていました。駅舎とホームが分かれている駅では2回ありました。 Russia駅への検問

モスクワの中心「赤の広場」に通じるすべての道でも同様の検問が行われていました。Russia赤の広場への検問

美術館などの主だった観光スポットでも同様でした。かなりの待ち行列ができることもあり、想定通りの時間で行動できないこともありました。

☆ロシアワールドカップの大会運営

開幕戦と決勝戦が行われたモスクワのルジニキスタジアム。日本で言えば国立競技場みたいなところです。レーニン像が観客を出迎えます。Russiaレーニン

ルジニキスタジアムへのアクセスは地下鉄2駅(2線)とバス停1つに限定され、決められた以外の方向に行こうとするとすぐに制止されました。Russiaスタジアムへのアクセス

徒歩でアクセスできる他の駅もあったのですが、駅への入場はできず、スタジアムへの道路は完全に封鎖されていました。試合前後の短時間に大人数の観客を混乱なく移動させるためには、無秩序な人の動きは断固阻止するということです。

スタジアムの周囲の観客の動線を作るために柵を設けることが多いですが、ロシアワールドカップでは人垣を多用していました。これはカザンでの試合後の様子。動線からはみだす観客を警備員が押し留めていました。Russia動線作る人垣

☆言葉は通じたか

事前に聞いていた通り、ロシアでは英語はほとんど通じませんでした。予約サイトで英語対応OKになっている中級ホテルでも、スマホの翻訳ソフトを使った対応をされることがよくありました。

若いボランティアの人たちとは比較的コミュニケーションが取れましたが、人によってはカタコトということもよくありました。

レストラン、みやげもの店など観光客を相手にする人たちは、英単語は聞いて理解できるし、発することもできますが、まとまった文にして意志を伝えられない、こちらが言っている文も理解できないというのが平均的なところでした。

地元客しか行かないスーパーやレストランでは単語すら通じないことがほとんどでした。

ロシアを旅する外国人にとって最大のネックがキリル文字です。かなり心配してましたが、開催都市の公共交通機関はほぼすべて英語が併記されて、英語のアナウンスもがありました。

これはモスクワからサンクトペテルブルクに行く高速列車のチケットですが、ネットの英語ページで予約したためか、ほとんどに英語が併記されていました。Russiaキリル文字

☆物価の高騰はあったか

ワールドカップのような大きなイベントで懸念されるのが、宿泊施設、交通機関の料金高騰です。

筆者は試合のチケットを確保した直後にほぼすべての宿とフライトを押さえましたので、バカ高い料金を支払わずに済みました。

筆者が泊ったモスクワ、サンクトペテルブルク、カザン、ソチは比較的大きな都市で、ホテルは平均で通常料金の2倍程度でした。ロシアには1泊素泊まり1000~2000円のホステルがたくさんあり、大会で値上がりしても数千円で、試合日直前でも空きはありました。

一方、日本代表の試合が行われたサランスクなど、宿泊キャパが多くない地方都市に泊ろうとした人たちは相当苦労したようで、試合後ホテルにたどり着くまでバスで数時間かかった人もいたそうです。

フライトに関しては、モスクワと比較的小さい開催都市を結ぶ料金が試合の2~3か月前から数倍に高騰し、試合に向かうのに最適の時間帯ではそもそも席が取れない状況になっていました。

☆街中、関連グッズだらけ

街中がワールドカップTシャツを着た人であふれていたのは、これまで筆者が出かけたブラジル、ドイツ、日韓大会以上でした。公式ショップやみやげもの店だけでなくいろんなお店がワールドカップ関連グッズを売っていました。

自販機までありました。Russia関連グッズ自販機

とにかく楽しかったロシアワールドカップ現地観戦ですが、ロシアとロシア人に対する見方はかなり変わりました。

☆2022年のカタール大会は

2022年はカタールで異例の冬12月開催です。ロシア大会とは逆に狭い地域での開催になります。スタジアム間の距離は最大で75kmとのことで、1日2試合のはしご観戦もできるようです。どんな大会になるのか楽しみです。

 

白夜のサンクトペテルブルク

ロシア第二の都市、サンクトペテルブルクは広いロシアの中でも最も西ヨーロッパ近くに位置しています。

白夜の季節は夜遅くまで、歴史を感じる堂々とした建築物に囲まれた街歩きを楽しめるとともに、美術や音楽にどっぷり浸れる魅力的な街です。

サンクトペテルブルクは水の都。
街の中心街を取り囲むように流れるネヴァ川と縦横にはりめぐらされた運河をクルーズ船が行き交います。ネヴァ川と船

サンクトペテルブルクの中心「冬の宮殿」はネヴァ川のほとりにどかっと建ってます。ネヴァ川と宮殿

今は大部分が「エルミタージュ美術館」となっていて、ロマノフ王朝と革命後の政府が収集した数多くの美術品を展示しています。エルミタージュ美術館展示室

元々が宮殿なので、内部の装飾など建物としても見どころたっぷりです。入っていきなり、ヨルダン階段の豪華絢爛さに圧倒されます。エルミタージュヨルダン階段

通路の側面、天井の装飾も見事です。sdr

空中庭園。エルミタージュ空中庭園

宮殿=エルミタージュ美術館の正面は広大な広場になっています。冬の宮殿広場

白夜の中のライトアップもすてきです。
(2018年7月4日の日没から約30分後)白夜の冬の宮殿広場

サンクトペテルブルク随一の観光スポットだけあって、観光客が集中します。入るのに長蛇の行列です。sdr

現地の観光業者さん曰く、「混んでいるのがイヤだったら、冬に来てください」。

エルミタージュ美術館からネヴァ川を挟んで向こう側にあるのが「ペトロパヴロフスク」要塞。ペトロパヴロフスク要塞

サンクトぺテルブルクをほぼ東西に走るネフスキー通りが街のメインストリート。歴史を感じさせる建物が建ち並びます。これはデパートや飲食店が入ったビル。ネフスキー通りデパート

夜は多くの建物がライトアップされます。白夜の季節は空が真っ暗になりません。 白夜のネフスキー通り

18世紀後半にサンクトペテルブルクを大きく発展させたエカテリーナ2世の像。背後の建物は劇場です。エカテリーナ2世像

夜になると幻想的。エカテリーナ2世像夜

「血の上の救世主教会」は20世紀初頭、ロシアの近代化を進めながら暗殺されたアレクサンドル2世の暗殺現場に建てられました。いかにもロシアって感じの教会建築です。血の上の救世主教会

カザン大聖堂は19世紀初頭の建築。ローマバチカンのサン・ピエトロ大聖堂みたいにしたかったそうで、ロシア正教の教会にしては珍しい長い回廊を左右に広げています。カザン大聖堂

白夜に浮かび上がるイサク聖堂。日没から約1時間半後の様子です。白夜のイサク聖堂

マリンスキー劇場のメインホールはヨーロッパ伝統の馬蹄形の造りです。連日、オペラやバレエが上演されます。マリンスキー劇場

サンクトペテルブルクは18世紀初めに荒れ果てた沼地だったところに一から人工的に作られた都市です。西ヨーロッパの主要都市(パリ、フィレンツェ、ローマなど)のような長い歴史があるわけではありませんが、どっしりした建築物に囲まれながら歩いていると、実際よりはるかに長い時の流れを感じます。

筆者は7月初旬の白夜の時期に訪れましたが、日没は10時30分頃で、メインストリートは夜中まで人通りが多く、バスや地下鉄も運行していて、薄暮の空にライトアップされた古い建物を観ながらの街歩きは愉快でした。

日本からサンクトペテルブルクへは西ヨーロッパ主要都市より近く、ロシアの玄関口モスクワだけでなく、直行便が1日2便飛んでいるヘルシンキから300kmで高速列車(所要約3時間)や船(所要13~15時間)でのアクセスが良いのでお薦めです。

 

 

 

ソチ:海と山が両方楽しめるロシアのリゾート

ロシアのソチ(Sochi)と言うと、2016年の冬のオリンピックを思い出される方もいらっしゃるでしょう。筆者は2018年7月、サッカー・ワールドカップ観戦を機に訪れました。ソチは海と山が両方楽しめる魅力的なリゾート地でした。

☆ソチはどこにある?

ソチはロシア南部、黒海に面しています。

ソチの街を中心に長さ約60kmのビーチが続いています。Sochi夕焼けの海岸

☆ビーチリゾートのソチ

ソチの中心街からビーチに向かう道にはヤシの木が並び、南国ムードが漂います。キリル文字がなかったらロシアとは思えない風景です。cof

ソチの海岸沿いのプロムナードには、お洒落なカフェやレストランが並びます。cof

筆者が訪れた7月初旬は既にバカンスシーズンで、これは午前10時くらいですが、既に大勢の客が繰り出していて、たくさんのビーチパラソルが開いていました。Sochiビーチ

マリーナにはたくさんのボートが係留されています。1時間1,500円くらいのクルージングツアーもありました。
ソチマリーナ

高台には高級そうなホテルとリゾートマンションが建ち並びます。このあたりのショップやレストランは、ロシアの安い物価水準からすればお値段かなり高めです。

それでもソチの中心街から電車で30分くらい行くと、賑やかさはなくなる代わり、物価はだいぶ安くなります。筆者が泊った海辺のホテルは、通常期でツイン又はダブルの部屋が1泊朝食付き¥3,500くらい。すぐ近くにロシアの庶民が行くスーパーで食糧も安く買え、2人で泊れば、1日ひとり¥4,000くらいでリゾートライフがおくれます。

同じ並びには長屋みたいな貸別荘が連なります。1階がリビング、キッチン、バスルーム、2階がベッドルームという造りでした。Sochiビーチと貸別荘

サッカー・ワールドカップの試合開催当日でしたが、ビーチでのんびりしているのはほとんどがロシア人でした。まだ国際的なリゾートではないということです。

☆オリンピックの名残り

ソチの中心街から電車で約40分くらいにあるオリンピックパークは遊園地も併設され、遠くにはアルペン会場になったコーカサスの山々が望めます。Sochiオリンピックパークとコーカサス山脈

ソチオリンピックのメイン会場として開会式、閉会式が行われたスタジアムは改装され、サッカー・ワールドカップの会場のひとつになっていました。ソチ五輪マーク

五輪マークはオリンピックパークに限らず、ソチの街のあちらこちらに残っていました。

☆アルペンリゾートのソチ

ソチがユニークなのは、ビーチリゾートから電車で40分のところにアルペンリゾートもあることです。アルペンリゾートの玄関口、ローザ・フトル(Rosa Khutor)駅はオリンピックを機に整備されてピカピカでした。Rosa-Khutor駅

駅の横からはロープーウェイに乗って、一気に標高2200mまで行けます。ロープーウェイを降りたところにはレストランもあって、テラスで雄大な山々を眺めながらのビールがうまい!Rosa-Khutor山

ゴンドラとリフトが交互にやってきて、好きなほうに乗れました。Rosa-Khutorゴンドラ

のどかな牧場。スイスみたいですが、ここはロシアです。Rosa-Khutor牧場

ふもとのローザ・フトルの街は瀟洒なホテルやリゾートマンションが立ち並ぶ典型的なヨーロッパのアルペンリゾートです。Rosa-Khutor街

☆ソチの魅力

ロシアは基本的に寒い国で、ロシア人たちには暖かいところへの本能的な憧れがあるのでしょう。ソチ一帯はロシアでは唯一のビーチリゾートで、スターリンをはじめ、歴代の指導者たちやセレブの別荘があり、「ロシアのリビエラ」と呼ばれています。

資源価格の高騰でロシア経済が潤った2000年代には巨額の投資が行なわれ、2014年のオリンピックに合わせて、山岳地域も開発が進みました。

暑い海辺のビーチリゾートに泊っていて、わずか1時間で、雄大な山々を眺める涼しい標高2000mまで行けるところは、世界中探してもめったにありません。

☆ソチへのアクセス

ソチはモスクワやサンクトペテルブルクから遠く離れており、フライトで訪れることになります。日本からはモスクワで乗り継いで約2時間半のフライトです。モスクワ経由の他にイスタンブール経由で行くこともできます。(2018年8月現在)

ソチの空港は、ソチの中心街とアルペンリゾートのローザ・フトルのちょうど中間、オリンピックパークの近くにあります。

ソチはロシア国内ではメジャーなリゾートですが、まだ、国際的には冬のオリンピック開催地としてしか知られていません。ソチの中心街をはずせば、格安料金でリゾートライフが楽しめる穴場リゾートです。

タタールスタンに行ってきた

タタールスタンに行ってきました。
と言うと、それ、どこ? ってよくきかれます。

タタール人はロシアで最大の少数民族で、トルコ系のイスラム教徒です。キリスト教が大多数を占めるロシアの他の街とは一味違ったエキゾチックな雰囲気を期待して、2018年6月、タタールスタンの首都カザンを観光に訪れました。

☆まずは、カザン・クレムリンへ

クレムリンと言うとモスクワが有名ですが、クレムリンとは「城塞」という意味で、ロシア各地にあります。

カザンのクレムリンはモスクワと同様に、河べりの小高い丘に築かれていて、まるごと世界遺産になっています。

城塞内にロシア正教の教会とイスラムのモスクが並び立っていて、カザンという街の成り立ちを象徴しています。dig

クルシャリフ・モスクは、近くで見上げると、覆いかぶさってくるようです。Kazanクレムリンのモスク

内部は巨大な空間。2005年の再建ということで、古めかしさはありませんが、荘厳な空気が流れています。

階段で天井近くまで登って見下ろすこともできます。外も内も青を基調とした装飾でした。Kazanクレムリンのモスク内部

夜の風情は期待通りエキゾチックで見とれてしまいました。他の建物もライトアップされています。dig

一方のキリスト教。たまねぎ型の屋根とカラフルな配色が特徴のロシア正教の教会です。Kazanクレムリンの大聖堂

聖職者限定の聖なる空間と一般人が入れるエリアが正面のイコン(聖画)で区画される、正教の典型的な造りです。Kazanクレムリンの大聖堂内部

カザン・クレムリンの入り口、「スパスカヤ塔」。
ここから入ると広い一本道が続き、その両側にモスク、教会などさまざまな建築物が建ち並びます。Kazanスパスカヤ塔

夜は神秘的な雰囲気です。Kazan夜のスパスカヤ塔

カザン・クレムリンにはいつでも入れますが、教会やモスクなどの建物は夕方になると閉まります。

大統領宮殿では今もタタールスタン共和国の大統領が執務しています。Kazan大統領宮殿

近年、ロシア連邦内部で自治権が縮小され、公式には大統領とは呼ばれなくなったそうですが。

歴史的な建造物が建ち並ぶ街を見下ろせるカフェ。観光客がたくさんいました。Kazanクレムリンのカフェ

この下の川べりには遊歩道が整備され、気持ちの良い散歩が楽しめます。

☆カザンを歩く

散歩の途中にこんな荘厳な宮殿が現れました。
タタールスタン共和国の農業関係の役所として使われているので「農業宮殿」と言われています。Kazan百姓宮殿

川にかかる橋から見たクレムリン。
白い城壁が夕焼けに染まります。カザンクレムリン夕焼け

☆タタール人居住区へ

タタール人が住んでいたエリアに行ってみました。緑を基調としたモスクのまわりの家々はロシア人たちの普通の住居とは雰囲気が違います。Kazanタタール人居住区

平日の午前中のせいもあってか、地元の人たちも観光客もまばらで、きれいに飾られた通りをゆったり散策できました。

☆カザンの中心街

今のカザンは人口約120万人のロシアでは4番目に大きな都市です。ヨーロッパの街の常で、街の中心の広場がありますが、カザンでは「トゥカイ広場」です。kazanトゥカイ広場

遠くにクレムリンも望めます。この通りからクレムリンまでの約1kmの「バウマン通り」がカザンのメインストリートで、両側にいろんなお店が建ち並び、朝から夜遅くまで賑わっています。Kazanバウマン通り

「カザンの塔」もバウマン通りに建っています。闇夜に浮かび上がる夜のほうが趣あります。mde

☆タタールスタンを食べる

タタール人は1000年以上前に中央アジアから移ってきた民族ということもあって、食文化にはアジア的な特徴があります。レストランのメニューにはロシア料理として知られているものが多く並んでますが、店員にどれがタタール伝統の料理なのかをきいてみました。

「エシボシマク」は肉、ジャガイモ、タマネギが三角形のパン生地で包み焼かれたもので、レストランだけでなく、スーパーや街なかのスタンドでも売っています。タタールスタンのファーストフードのようです。Kazanエシポシマク

肉料理の付け合せかと思ったら、「クストゥブイ」は小麦の薄い生地にジャガイモのペーストが包まれていました。Kazanクストゥブイ

☆カザンへの行き方

モスクワから夜行列車で行くと12-13時間かかります。カザンの駅から街の中心トゥカイ広場へはバスか路面電車で10~15分です。

夜行列車の食堂車では軽食が取れ、お酒も飲めるので、それなりに快適なのですが、長時間横になってガタゴト揺られるのがつらい方はフライトになります。

モスクワからカザン空港へは約1時間半のフライト。空港からは電車があるのですが、1時間半に1本くらいしかなくて不便です。バスと地下鉄を乗り継いで行くこともできますが、乗り換えの地下鉄駅が終点ではないので、暗くなってからの到着だと苦労します。

☆安全なスタンへ国行ってみよう!

「スタン」のつく国って、いくつかありますが、なんだか危なそうな印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。いつも民族紛争とかテロやってそうとか。

「スタン」国の多くは中央アジアにあって、1990年代のソ連崩壊とともに独立しましたが、タタールスタンはロシアの真っただ中にあったため、独立せず、平和裏にロシアの中の自治共和国にとどまりました。

独立した中央アジアのスタン国にはイスラム過激派が入り込んだりして、かならずしも安全ではないのですが、タタールスタンは治安が安定してるロシアの中にあるので安心して旅できます。

首都カザンは2018年サッカーワールドカップの会場のひとつになったこともあって、公共の場に英語の併記が進み、観光旅行しやすくなりました。

バウマン通りには観光案内所もあって、英語のガイドのついた市内観光、エクスカーションも多数あります。

西欧の名所観光に飽きた方にはタタールスタンはお薦めです。

 

 

スヴィヤシュスク:ロシアの秘境の世界遺産

スヴィヤシュスク(Sviyazsk)はロシアのいなかに忽然とあらわれる宗教の村です。(⇒地図1

ロシアの大河ヴォルガに浮かぶ要塞の島に、キリスト教の修道院や教会が建ち並びます。内部の装飾にはロシア正教の粋を感じられます。

☆スヴィヤシュスクのあるタタールスタン

タタールスタンはロシアで最大の少数民族タタール人の自治共和国です。とは言え、ロシア人も人口の半分近く住んでいて、ロシア正教のキリスト教とイスラム教の文化が混ざりあったところです。(詳しくは⇒こちらへ

スヴィヤシュスクから眺めるヴォルガ川。
その向こうに広がる大地に、小さく見えるネギ坊主屋根の教会。ロシアらしい景色です。スヴィヤシスク街と周囲の景色

スヴィヤシュスクはタタールスタンの首都カザン経由で訪れます。

☆スヴィヤシュスクを歩く

スヴィヤシュスクはヴォルガ川に浮かぶ島と言われますが、今では川の水位が下がって細い長い陸続きです。(⇒地図2

バスは要塞の下に着きます。
筆者が訪れたのはサッカーワールドカップの開催期間中で、ロシアにはいつも以上に観光客がいるはずでしたが、村の唯一の駐車場にこれだけしかいませんでした。スヴィヤシスク駐車場

チケットを買い、階段を登って宗教村へと入っていきます。スヴィヤシスク入口

入ってすぐのところにあるのがウスペンスキー大聖堂を中心とする教会と修道院の建物群。ウスペンスキーは「生神女就寝」と訳されます。スヴィヤシスクウスペンスキー教会群

内部のフレスコ画が見事とのことですが、筆者が訪れた時は修復中とのことで入れませんでした。

スヴィヤシュスクで最も大きなカテドラルには入れました。「Cathedral of Icon of the Mother of God Joy of All Who sorrow」と英語表記されていましが、なんと訳すのでしょうか?スヴィヤシスクカテドラル

その内部。スヴィヤシスクカテドラル内部

カテドラルの脇に建つトロイツカヤ教会は珍しい木造。スヴィヤシスクト トロイツカヤ教会

トロツカヤ(Trinity)とはキリスト教の「父と子と聖霊」の三位一体を意味します。その内部を歩くとミシミシと足音がします。石造りの教会とは空気感が違う気がしました。 mde

一周ぐるっと歩いて30分くらいの島の中には、この他にもいくつもの教会建築が残っています。スヴィヤシスク地図

☆スヴィヤシュスクの歴史

スヴィヤシュスクの町は、16世紀にモスクワを中心に膨張を続けるロシアの皇帝イワンが、西方のイスラム勢力(カザンハン国)を攻略するための前線基地として築きました。カザン攻略後は、この地域にキリスト教を広める中心となり、教会や修道院がたくさん建てられました。

宗教を否定したソ連時代には、政治犯の収容所や精神病院として使われましたが、ソ連崩壊後、宗教施設としてよみがえりました。

2017年には「スヴィヤシュスク島の聖母被昇天聖堂と修道院」として世界遺産登録され、地元の政府は観光に力を入れ始めています。

建物の説明書きはロシア語、タタール語、英語が併記されています。スヴィヤシスク説明書き

しかし、モスクワやサンクトペテルブルクなどのロシアの主要都市から遠いため、訪れる人はまだ少ないようです。

☆スヴィヤシュスクへの行き方

スヴィヤシュスクはこの地方の中心都市カザンから西方に直線距離で30Kmほどで、船で約2時間(日に1、2便)です。ヴォルガ川からの雄大なロシアの平原を眺めながらの船旅です。

筆者はカザンの港でスヴィヤシュスクへの切符を買おうとしましたが、英語が全く通じず、なんとかわかる人を探して通訳してもらいましたが、今日は満席ということでした。

スヴィヤシュスクの港に着いた船。スヴィヤシスク港

そこで、カザンの街の中心から英語ガイド付き1日ツアーでスヴィヤシュスクを訪れることになりました。

片道1時間半、ガイドについて1時間くらい案内してもらった後、自由時間が1時間半ほどありました。船でフリーで来ると4~5時間滞在できるのに比べて、あわただしい気がしました。

カザンへはモスクワからフライトで約1時間半、夜行列車で12~14時間です。

筆者の場合、お昼12:00に成田発、モスクワ乗継で夜9時にカザンに着きました。

スヴィヤシュスクは日本ではほとんど知られておらず、日本から訪れる人も少ないですが、ロシアの宗教文化を肌で感じられるとともに、島から眺めるヴォルガ川と雄大なロシアの平原の景色も魅力的です。

秘境と言っても、人口120万人の街から2時間でアクセスでき、地元の料理が食べられる軽食カフェもありますので、快適な滞在を楽しめます。