モロッコは、アフリカの西の果てにありながら、日本から最も気軽に観光できるイスラム国です。イスラム教の規律が比較的緩く、国が観光に力を入れているので、交通機関、宿泊施設などの観光インフラが整っています。
ここでは、モロッコの魅力とともに、日本からのパックツアーに入らず、個人でホテルや交通手段を手配して観光するコツをご紹介します。
☆モロッコの観光地
まずは、モロッコの代表的な観光地をご紹介しましょう。
① モロッコの縮図マラケシュ
モロッコ旅の魅力のひとつは、歴史ある街のメディナ(旧市街)を歩くことです。中世の時代に形造られ、今も人が普通に暮らしています。
マラケシュ(Marrakech)にはモロッコ最大のメディナがあり、まるごと世界遺産になっています。メディナの中に網の目のように広がる商業地区スークには、狭い道の両側に所狭しと様々な店が並びます。
マラケシュの中心ジャマ・エル・フナ広場(通称、フナ広場)は、夜になると多くの屋台が開き、大道芸人のパフォーマンスを大勢の人が取り囲みます。連日連夜のパーティです。
② 迷宮都市フェズ
城壁に囲まれた巨大迷路です。
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③ サハラ砂漠
アフリカの3分の1を占めるサハラ砂漠に最も手軽に個人でアクセスできるのがモロッコです。どこまでも続く砂山の世界に大自然の神秘を感じます。
砂漠の中のテントに泊まり、たきぎを囲んで地元のベルベル人の奏でる音楽を聴くのは得難い経験です。
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④ 砂漠近くの要塞都市
モロッコの地中海に近い地方の風景はヨーロッパとさほど変わりませんが、モロッコの中央を走るアトラス山脈を越えると、そこは別世界。南から砂漠が迫る荒涼とした世界が広がります。ここに城壁に囲まれた要塞が点在します。
その代表が世界遺産になっているアイト・ベン・ハッドゥ(Ait Ben Haddou)。
マラケシュからのサハラ砂漠ツアーでは必ず立ち寄ります。
⑤ 青いメルヘンな街シャウエン
シャウエンは街中が青で染められた不思議な街です。
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その他、筆者は訪れていませんが、
・メクネス(Meknes):フェズの近くの古都。
・メクネス近くの古代ローマ遺跡:ヴォルビリス(Volubilis)
・南部の港町エッサウィラ
などがあります。
☆イスラム建築を愛でる
モロッコ各地に数多く残るイスラム教関係の施設を訪れ、細部まで精巧な装飾が施された芸術的な建築物を観て、エキゾチックな雰囲気に浸ることができます。
イスラム教徒以外はモスクに立ち入ることはできませんが、入口から中の建築物をちら見することはできます。
これはフェズ最大のカラウィン・モスク。
神学校ならイスラム教徒でなくても入れます。フェズのブー・イナキア・マドラサの壁面の幾何学模様のモザイクがすばらしい。
☆モロッコを食べる
モロッコ人がほとんど毎日食べている代表的な料理のタジンは、三角錐のフタをして弱火で牛肉、野菜、ラムなどの様々な具材を煮込んだ料理です。街中のレストランでパンやポテトの付け合せと共に供されます。値段は50DH(≒580円)くらいからあります。↓これは肉のタジン。
モロッコ料理というより北アフリカ料理と言ってよいクスクス。小麦を蒸した上に様々な具材がのっています。スパイスによってかなり味が変わります。↓これは野菜クスクス。
これも北アフリカやアラブ、トルコ系の国々で広く食べられているケバブ。↓付け合せにモロカンサラダ(モロッコ風サラダ)
観光で訪れるモロッコの主要都市にはたくさんのレストランがありますが、モロッコ料理として出されるメニューのバリエーションはさほど多くありません。メインはクスクス、タジンが数種類づつ、ケバブ、モロカンサラダ、スープなど。
筆者のお薦めは、建物の上層階のテラス席のレストランで街の景色や行き交う人々を眺めながら食べることです。特にメディナにはたくさんあります。眺めが良い分、少しばかりお値段高めですが、そもそもの物価が安いので違いは100~200円程度です。
フェズのメディナ入口のブー・ジュルード門の目の前には数軒のテラス席レストランがあります。
シャウエンの中心ウタ・エル・ハマム広場を見下ろすテラスのレストランです。
☆リヤドに泊る
リヤドとは「中庭のある邸宅」を意味するアラビア語で、今では「伝統ある中庭付きの邸宅をリノベーションした宿」という意味合いです。リヤドに泊れば、昔の富裕層の暮らしを実感でき、モロッコ旅気分が盛り上がります。
筆者が泊ったマラケシュのリヤドは、半透明の屋根に覆われた中庭のまわりの1階2階に客室が配され、中庭にはテーブルが置かれて食事ができました。
リヤドは高級なところから1泊朝食付きで2,000円台で泊れるエコノミーなところまで様々ありますが、たいていはこのような造りになっています。
オーナーのこだわりのインテリアが施され、モロッコ伝統の家具や調度品が置かれています。
但し、リヤドはメディナの狭い路地の奥にあることが多く、もともと個人の邸宅なので、「Riad XXXX」の表札が掲げてないこともあるので、予約したリアドにたどり着くのに苦労することがあります。
☆なんでも安いモロッコ
物価が日本や欧米よりかなり安いのもモロッコの魅力です。
フェズ、マラケシュ、シャウエンなど観光都市の宿泊施設は多く、オフシーズンであれば、かなり高級なホテルでも1万円以下で泊れます。
レストランでもメインのタジンやクスクスが50DH(≒580円)から食べられます。マラケシュのフナ広場で売られているオレンジを絞ったジュースは60円、ペットボトル500mlの水は40~90円。
タクシーが安いので、駅やバスターミナルから観光名所のメディナなどへは気軽に利用できます。特に暑い季節は重宝します。但し、観光客と見るや、メーターをたおさず料金をふっかけてくるドライバーがたくさんいます。行先を告げて値段を交渉のうえ決めてから乗るのがいいでしょう。
☆モロッコへの行き方
日本からモロッコへの行き方、プランニングのコツをご紹介します。
① モロッコへのフライト
日本からの直行便はありませんので、どこかで乗り継ぎが必要です。
モロッコに最も多くのフライトがあるのは、パリ経由のエールフランスです。しかも、モロッコのゲートウェイ(玄関)であるカサブランカだけでなく、マラケシュへもパリからのフライトがあります。日本からパリへは1日3~4便あるので、モロッコ旅行では最も使い勝手の良いエアラインです。
価格を重視するなら、ドバイ経由のエミレーツ航空、ドーハ経由のカタール航空です。両社とも日本から乗継地へは1日2便、乗継地からモロッコへは1日2~3便ずつあります。
② 海峡を渡ってモロッコへ
スペインから船でジブラルタル海峡を渡ってモロッコへ行くこともできます。スペイン側の港町は、アルヘシラスとタリファ、モロッコ側はタンジェです。
ジブラルタル海峡はかなり狭く、船は1時間あまりで海峡を渡ります。↓タンジェからスペインがはっきり見えます。
アルヘシラスからタンジェへは1日十数便ありますが、タンジェの港(新港)はタンジェ市街から約40kmあり、バスで30分くらいです。タリファからは便数は少ないですが、タンジェの市街地近くの港に着きます。
タンジェからカサブランカへは高速鉄道で2時間10分です。
モロッコ側に飛び地のようにあるスペイン領セウタまで船で渡り、陸路、国境を越えてモロッコに行くこともできます。
③ プランニングのコツ
フライトでカサブランカで入国し、カサブランカから帰国すると、モロッコ国内での移動距離(時間)が長くなります。旅行に使える日数の短い方は、行きか帰りのいずれか一方を、モロッコ旅行で必ず立ち寄るマラケシュにすることをお薦めします。
日本からの直行便のあるヨーロッパや中東の主要都市からマラケシュへは、LCCも含めて多くの直行便があります。
カサブランカで乗り継ぐこともできますが、モロッコ航空の国内便は予約したフライトに搭乗できず次のフライトにまわされることが多いとのことでお薦めできません。筆者はこれでカサブランカの空港で5時間半待たされました。
☆モロッコの国内移動
主要都市の間は鉄道が利用できます。同じ区間のバスより速いことが多いので使いやすいです。
乗り方、切符の買い方は日本とほぼ同じです。駅によってホームに行くまでに、改札のようなところでチケットのチェックを受けることがあります。但し、2019年12月時点で、鉄道運行会社ONCFのサイトでネット購入はできません。
ヨーロッパへの玄関口タンジェ(Tanger)とカサブランカ(Casablanca)の間は、アフリカ初の高速鉄道で2時間10分で結ばれています。
運賃は安く、2等車(普通席)はおよそ149DH(≒1700円)で、ほぼ同距離の新横浜~名古屋の約6分の1でした。
バスは国営のCTMと民営バスがあり、バスターミナルが分かれているところもあります。同じ路線でも、CTMのほうが値段が若干高い代わりに、停車が少なく早く着きます。
街の中の移動はバス、タクシーです。特に値段の安いタクシーは重宝しますが、モロッコのタクシーは乗り合いです。道で手を挙げると、既に客が乗っているタクシーでも止まってくれ、目的地が同じ方向だと乗せてくれます。逆に自分が乗ったタクシーに後から他の客が乗り込んでくることがあります。どちらにしても、乗るときにドライバーに目的地を告げて、値段の合意をすることが基本です。
☆サハラ砂漠ツアーの組み込み方
国内の公共交通機関が充実していて、個人旅行しやすいモロッコですが、サハラ砂漠へはマラケシュやフェズからのツアーを利用することをお薦めします。最もよく利用されるのが2泊ツアーで、2日分の夕食、朝食、移動すべて、乗ラクダ含めて1万円くらいからあります。
サハラ砂漠に加えて、モロッコの2大観光都市マラケシュとフェズの両方を訪れる場合は、砂漠ツアーの行きか帰りかのどちらかをマラケシュ、もう一方をフェズにするのがいいでしょう。
この両都市と砂漠の間の距離は600~700kmと同じくらいで、ほぼ丸1日かかるマラケシュ⇔フェズの移動をしなくて済むからです。
☆モロッコ旅行で気をつけること
ヨーロッパに近く、観光のインフラは整ったモロッコですが、モロッコ特有の要注意事項があります。
① 押し売りガイド
メディナを歩いていると、「Close、Close」と言ってくる輩がいます。この先は道が閉鎖されているから、行きたいところへ自分が案内してやるというのです。ほとんどが若者から中年までの男です。
親切にされたと思ってついていくと、目的地に着いたところで多額の金を請求されます。筆者はフェズで10DH(≒110円)コインを渡してその場を離れましたが、札の入ったサイフを出したところで強奪されることもあるそうです。
道を尋ねた時に相手がこのような輩だと同じ目に遭います。
絨毯店に連れていかれて、しつこい押し売りに遭うこともあるそうです。
「どこへ行くんだ?」「自分が案内してやる」と話かけられたら、返事をせずに無視しましょう。1回でも返事するとしつこくつきまとわれます。
② メディナを疾走するバイク
両側に商店が並び買い物客が行き来する幅2~3mの道をバイクが疾走していきます。マラケシュやフェズの迷路のようなメディナでよく遭遇します。
慣れていて人に接触しないように巧みにジグザグ走行していくのですが、近くに来るとヒヤヒヤします。
③ 夜の人気のない道の一人歩き
モロッコの治安は良いですが、夜の人気のない道の一人歩きは危険です。特に、マラケシュやフェズなどの迷路のようなメディナでは夜遅くまで店は開いていて賑わっており、夜の街歩きは楽しいのですが、歩くのは人通りの絶えない道だけにしましょう。
④ 女性の肌の露出
イスラムの国全般に言えますが、女性の服装は気をつけましょう。
⑤ ロバのフン
モロッコではロバが日常の運搬手段として使われています。道でロバのフンを踏まないように気をつけましょう。
⑥ 入口がわかりやすい宿泊施設を選ぶ
モロッコの宿泊施設を予約する際には、施設の説明や口コミを読んで、入口のわかりやすいところを選びましょう。特にメディナの奥まった場所にあるリヤドの場合です。
地図を持って目指す宿泊施設のすぐ近くに着いても、どこが入口かわからずにウロウロしていると、押し売りガイドが寄ってきます。「Riad XXXX」と言ってしまうと、「ついてこい」と勝手にガイドされてしまい、目指すリヤドに着いて金を請求されます。
上述のモロッコ特有のリスクに気をつけて、イスラムにレスペクトを持って旅をすれば、食べ物はおいしく、人は親切、なんでも安く、とても快適にモロッコを個人で旅することができます。
皆さん、良い旅を!